劇団ひとり監督×大泉洋、ストイックな姿勢の先にある見果てぬ夢
2014年5月23日 16:30
![互いの存在をリスペクトし合う劇団ひとりと大泉洋](https://eiga.k-img.com/images/buzz/43830/oizumi-hitori_large.jpg)
[映画.com ニュース]お笑い芸人、作家、俳優としてマルチな活躍をみせる劇団ひとりが、またひとつ、映画監督という新たな肩書きを手に入れた。それも、とびきり完成度の高いデビュー作「青天の霹靂」(5月24日公開)を携えて。今作で主演を務めたのは、劇団ひとりと同様にあらゆるジャンルで才能を発揮し、誰からも好かれる大泉洋。互いの存在をリスペクトし合う2人が、撮影現場ではどのように対峙(たいじ)していたのか。パブリックイメージとは異なる、ストイックなまでに真摯な眼差しを注ぐ2人の姿が、そこにはあった。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)
昨年8月、ひとり監督と大泉は長野・上田市にある大正6(1917)年創業の老舗劇場「上田映劇」のステージ上で話し合っていた。その直前まで、出演も兼ねるひとり監督が初共演となる大泉とともに顔を朱に染めるほどの本気モードで押し問答を繰り広げていたとは思えないほどに、穏やかな口調で「……という感じでお願いします」と説明する。大泉は、「監督は段取りに重きを置かず、流れを説明するだけ。とにかくテンポが良くて、全ては本番に照準を合わせている」と納得顔だ。
この演出手法について、ひとり監督は「特に芝居場とされるシーンは、最初にいいものが出るだろうなとカメラマンとも話していました。1発目を大事にしたかったので、なるべく1発撮りにしたかった。テストの段階でその感情がちょっとでも抜けてしまうのはイヤだったんです」と話す。
今作は、累計発行部数100万部を突破した「陰日向に咲く」に続く、ひとり監督の書き下ろし小説第2弾。天涯孤独の売れないマジシャン・晴夫が、40年前の浅草にタイムスリップし、若き日の両親と出会いながら自分の出生の秘密を知る姿を、ユーモアを交えながら描いている。
![画像2](https://eiga.k-img.com/images/buzz/43830/main08_large_large.jpg?1400817807)
大泉は、二刀流に挑戦したひとり監督に対し「やっぱり共演していて安心感がありますね。なんたって監督が自ら演じているわけですから、おっしゃる通り誰よりも世界観は分かっていらっしゃるし、セリフのミスも少なかった」と最敬礼。しかし、マジック監修を務めるマジシャンの魔耶一星氏から手ほどきを受けるなか、コインとカードを使ったマジックに苦戦した。現場でも常にカードを手放すことなく「手元のテクニックが必要なので、イヤになる。底なしですよ」とぼやいていたが、魔耶氏は大泉を「イメージを具現化する能力は高くて器用だし、本番にも強い。しかし練習態度は非常にネガティブ」と評する。
魔耶氏の発言に対し、大泉は「僕はぼやき体質で、常にぼやいていたい人なんです。弱音をはいて、はいて、生きている人間なものですから、それが練習態度がネガティブだったということなんですよ。ちょっとやってできないと、『いやあ、もうできない。なんでこんなにできないんですかねえ。大体ね、マジシャンが演技を覚えてやった方が早いですよ』とかね。そうやって20~30分くらいぼやいて、『さて、じゃあやろうか』と練習を再開するわけです」と説明する。
大変なことを大変だと感じさせない言い方は、大泉ならではの気配りといえる。本編冒頭で披露するカードマジックのシーンは、撮影最終日に行われたが、ひとり監督が24テイクでOKを出したのに対し、大泉は続行を直訴し86テイクを数えた。スタッフによれば腱鞘(けんしょう)炎になっていたというが、そんなことは一切口にしない。どんな現場であれ、そこはかとなく穏やかな空気を醸し出しているのが大泉という俳優の美徳なのかもしれない。大泉に、国民的人気キャラクター“寅さん”で知られる故渥美清さんの姿を重ね合わせる関係者も少なくない。
「恐れ多い」と恐縮しきりの大泉は、「いろんな記者さんが僕のことをコメディ俳優って書いてくださいますが、実はあんまりコメディってやっていないんですよ。ハートウォーミングなお話やシリアスなものが多いものですから。でも、渥美さんのようになれれば、それは素晴らしいですよね」と表情をほころばせる。「男はつらいよ」シリーズの大ファンで知られるひとり監督は、「すごい称号を手に入れましたね」とニッコリ。そして、俳優としての大泉の魅力について「すごく心配性。マジックはもちろんですが、お芝居のことでも。あらゆるシーンで疑問をいっぱい投げかけてこられましたし、それがまた的を得ていることが多かった。心配性って、この仕事をしていくうえで、すごく大事な要素だと思います」と語ってくれた。今後も引っ張りだこの状態が続く大泉だが、近い将来、監督として非凡な才能を開花させた劇団ひとりとの再タッグを願わずにはいられない。
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