まるで似ていないイドリス・エルバが、マンデラ役に起用された理由とは?
2014年5月13日 17:10
[映画.com ニュース] 2013年に死去した南アフリカ共和国第8代大統領ネルソン・マンデラ氏の自伝を基に、壮絶な半生を映画化したヒューマンドラマ「マンデラ 自由への長い道」で、イドリス・エルバがマンデラ役に起用された理由が明らかになった。
エルバは1972年生まれの英ロンドン出身で、ドラマ「刑事ジョン・ルーサー」で主人公を演じたほか、近年は「マイティ・ソー」シリーズ、「ゴーストライダー2」「プロメテウス」といった話題作に次々と出演。「パシフィック・リム」ではペントコスト司令官を演じ、強い存在感を示した。
アクションからドラマまで、幅広い演技で活躍するエルバだが、マンデラ氏本人とは似ていないのにもかかわらず、なぜ「マンデラ」の主役に抜てきされたのか。「マンデラ氏の見た目をそっくりものまねできる演者を探すつもりはまったくなかった」と、ジャスティン・チャドウィック監督はキャスティングの真意を明かす。
「この物語を描く上で大事だったのは、マンデラ氏への尊敬の念ばかりを表すような描き方ではなく、彼も欠点のある人間であるということを示しながら、同時に、磁力のような魅力をもった人物であると描くことだった」とチャドウィック監督は語る。「(マンデラ氏の持つ)スピリットを捉えたかった。その意味でイドリスはまさに適任。彼の演技は間違いなく、新たな(マンデラ像の)啓示です」と、エルバ起用の理由を明かした。
一方のエルバは当初、「バカ言ってるんじゃないよ。僕の役じゃないだろう」とマンデラ氏を演じることに難色を示したそうだが、“人間マンデラ”の魅力に興味をひかれ、6カ月間を掛けた徹底的な役作りと4時間におよぶ特殊メイクによって、23歳から76歳までのマンデラ役を演じ切った。劇中では、幼少時代から、弁護士となり反アパルトヘイト運動へ身を投じていく青年時代、そして投獄され、やがて解放を迎える大統領選挙の時期までが、彼を支えた妻や娘たちとの絆とともに描かれる。
「これがマンデラだ! というものをつかむのに、自分の演技にその自信を込めるまでに時間が掛かった」と振り返るエルバだが、あるきっかけが大きな転換期になったという。それは、「南アフリカ出身でもないイドリスが、実際にその体験(アパルトヘイト)をしている1000人以上の群集たちの前で演説し、いかに彼らの心を動かせるかということが大事だった」と監督が明かす、南アフリカで実際に生活する普通の人々をエキストラとして動員した演説のシーンだ。
エルバは、「(アパルトヘイトを実際に体験した)エキストラの方々の前で演じたことが、私にはとても重要だった。実際のマンデラ氏より若い俳優が、彼らも知らないころを演じることに理解を示してくれたように感じられ、その瞬間、感激を覚えた。皆さんのおかげで、マンデラという役を自分が演じ切る力を確かにもらった」とその時の心情を語っている。
「マンデラ 自由への長い道」は、5月24日から全国公開。
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