矢口史靖監督「WOOD JOB!」で原点回帰!「これからもガツガツやっていきたい」
2014年5月9日 08:40
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[映画.com ニュース] 「ウォーターボーイズ」「ハッピーフライト」「ロボジー」など、オリジナル脚本で独自の世界観を描いてきた矢口史靖監督が、初めて小説原作の映画化に挑んだ「WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常」。シナリオハンティングで何度も足を運んだというロケ地の三重・津市を再訪した矢口監督に、これまでにない野心作へ込めた熱意を語ってもらった。
原作は、直木賞作家・三浦しをん氏が自身の祖父のルーツに発想を得た「神去なあなあ日常」。小説の映画化と聞いて驚く矢口監督ファンも多いと思われるが、意外にも本人は「ずっと面白い原作を探していた」そうで、今回は「ようやく運命の人に出会えた」ということらしい。しかし“原作モノ”と言えど、矢口監督の脚本へのこだわりはこれまでと何ら変わらない。
「9カ月くらいかけて取材をし、自分が体験した面白ネタを脚本に込める時、原作のことは正直ほとんど考えていなかった。『この形でこそ映画化して面白い』と思える脚本を書かなければ意味がないと思っていたので。『そんな身勝手な話があるかっ!』て感じだけど、作品ごとに時間がかかるのはそのせい。今回は『イケるぞ!』っていう脚本が完成したものの、原作者確認というのは初めての関門。とても緊張したけれど、三浦さんも『面白かったので直すところなんてない』と言ってくれ、想像以上にうまく企画が進んだんです」
大学受験に失敗した高校生・平野勇気(染谷将太)が、たまたま目に留まったパンフレットの表紙の美女(長澤まさみ)につられ、軽い気持ちで林業研修に参加。最初は山での過酷な研修に逃げ腰の勇気だったが、周囲の人々や大自然に支えられながら、少しずつ山の男として成長していく。
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もちろん、都会から田舎へ飛び込んだ青年のコミカルな成長物語としてシンプルに楽しむこともできる。しかし、実際はそんな爽やかな青春を切り取っただけの映画ではなく、“山に生きる”ということを、見る者の五感をくすぐるような迫力たっぷりのリアリティ映像で描き出している。「切り出した角材ってスベスベで扱う人がケガをしないようになっているけれど、森に生えているあの植物は違う。その人間よりも遥かに長生きしている“生命”を切り倒すということは、とても残酷でワイルドな作業。そこにこそ林業のすごみを感じた。それに、自分が植えたものが評価される前に自分たちは死ぬわけで、具体的な仕事のモチベーションはどこにあるのだろうと不思議だった。伐倒がうまくなるとチェーンソーの回転や手さばきなどで狙ったところに木を倒せるそうで、それはビリヤードやゴルフに近い感覚があって快感らしい。それでも林業家の方々はやっぱり不思議な生き物たちでした」と、矢口監督の実感は主人公の心情に重なる。
また、これまでの矢口作品には登場しなかった強烈なキャラクターたちも魅力のひとつ。矢口監督は、「僕の中の人間くさいものへの渇望を、原作に引っ張り出されたのだと思う。特に、伊藤英明さん演じるヨキを描くことの楽しさは新発見。映画にヨキ夫婦は“妊活”中という原作にはない要素を入れたけれど、僕自身も脚本を書いているうちにこの夫婦のことがどんどん好きになっていき、現場でも彼らのやり取りを見ているのはとても楽しかったんです」という。
“妊活”を公にするなど神去村ならではの“むき出し”の暮らしは、人間本来の生命力を感じさせる。「開けっ広げなエロチシズムって楽しい。村の人々は、デジタル世界からやってきた主人公が圧倒されるくらい生命力を隠さない。そういう“動物くささ”を描くと、きっとこの村は楽しくなるなと思った。都会の窮屈さから開放され、お客さんと勇気君の気分を同調させたい狙いもあったし、どうしても草食になってしまいがちな都会に、もっと生き物としてガツガツしてもいいんじゃないかなとも思っているんです」と矢口監督ならではのメッセージを込めた。
長年の矢口監督ファンにとっては、自主映画時代の密かな凶暴性をも感じさせてくれる嬉しい野心作となった。「今回は全く新しい座組ということもあり、結構な無茶を言っても意外とすんなり通って好き放題できたんです(笑)。コマ撮りや変なところにカメラをつけてみたり、思いついたことは片っ端からやってみた。自主映画を作っている時は、『面白かったらやってしまえ!』という貪欲さがあったけれど、最近はそれを忘れかけていたのかも。映像表現に限りはない、何でもありなんだと思い出せた気がする。この先もこの気持ちを忘れずに、ガツガツやっていきたいなと、今はそんな新鮮な気持ちでいます」という矢口監督のやんちゃな原点回帰に大注目だ。
「WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常」は5月10日に全国で公開。
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