ラウル・ルイスが遺したプロジェクト「皇帝と公爵」バレリア・サルミエント監督に聞く
2013年12月27日 21:15
[映画.com ニュース] 2011年に死去したチリ出身の巨匠ラウル・ルイス最後のプロジェクト「皇帝と公爵」が12月28日公開される。19世紀初頭のナポレオン戦争を背景に、ウェリントン将軍率いるイギリス・ポルトガル連合軍がナポレオンを破るまでの戦いの中で繰り広げられるドラマを描く壮大な歴史絵巻だ。ルイスのパートナーで、本作のメガホンをとり完成させたバレリア・サルミエントに話を聞いた。
編集者としてラウル・ルイスとともに長い間一緒に仕事をし、ルイスが病に倒れる以前から本プロジェクトについての意向は把握していたが、ルイス自身が準備できたことはごくわずかだった。「その状況の中でも、編集者として彼のやり方を知っていたことと、私自身も監督経験がありましたので、このプロジェクトを途中から引き継ぐ決心をしました。実際引き継いでみて、とても簡単なことではないと思いましたが、この映画に協力・参加してくれたすべての人が、ラウルにオマージュを捧げるという意味で集まってくれていましたし、その私たちの側に、常にラウルの魂が付き添ってくれているような映画作りでした」と振り返る。
ウェリントン役のジョン・マルコビッチをはじめ、カトリーヌ・ドヌーブ、イザベル・ユペール、メルビル・プポー、マチュー・アマルリック、ミシェル・ピッコリら豪華俳優陣が集結した。「3~4人のキャスティングはラウルが念頭に置いていた人はいましたが、ほとんどのキャストは彼の死後に私たちが決めました。また、ラウルにオマージュを捧げたいと、ドヌーブ、ピッコリ、ユペールのスイスの家族が食事をしているシーンは、特別に付け加えました」と明かす。
全編ポルトガルで撮影し、ヨーロッパ映画として「ナポレオン侵攻時の国土の荒廃、日常の人々を描くことが重要でした」とテーマを説明する。ナポレオンの歴史の中で初めての敗戦であるブサコの戦いを扱い「今のヨーロッパが、過去のたくさんの戦争の上に成り立っているということを忘れてはいけないと思います。現在はEUとして一つのかたちになってはいますが、その下には様々な戦争があったうえで現在のかたちになっているということを、このような映画を通してでも忘れてはいけないと思います」と語る。そして、「戦争において苦しむのは女性たちなんだということを伝えたかったのです」とサルミエント監督のアイディアで女性キャラクターに重要性を与えた理由を話した。
巨匠亡き後、これからの活動については「ラウルが多くの映画を残していますが、中にはフィルムが傷んでいたり16ミリで撮ったものもあるので、修復をして、フランスのシネマテークなどでレトロスペクティブ上映などをしたいと思っています。またラウルは常に色々なアイディアや次回作の構想などがありましたので、それらを脚本として形にしていくという事にも取り組んでいければと考えています」と構想を語った。
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