映画評論家・町山智浩氏、母校の早大で「20世紀名作映画講座」を特別講義
2013年9月16日 16:50

[映画.com ニュース] 映画評論家の町山智浩氏が9月16日、開催中の名作映画の特集上映企画「新・午前十時の映画祭」の学生動員数増加を目指し、母校である早稲田大学で学生たちに特別講義を行った。
映画ファンから熱い支持を集めてきた同映画祭は、映画の黄金時代に生まれた傑作娯楽映画を1年間にわたり高品質のデジタルシステムで上映する企画。今年で4回目を迎え通算動員数は200万人に迫っているが、依然として40~60代の客層が多く、10~20代の学生層の動員増加が期待されている。
この日の課題作品は、「ローマの休日」「メリー・ポピンズ」「ロッキー」など20世紀を代表するアメリカの名作映画。町山氏は学生たちとフランクにコミュニケーションをとりながら、「『ローマの休日』はグレゴリー・ペックの映画のつもりで作ったけれど、完成してみるとこれは当時無名だったオードリー・ヘップバーンの映画だと。今の『あまちゃん』みたいな感じ。単純なラブストーリーではなく、第2次世界大戦の爪痕が残っている時代を描いた映画」と説明した。
さらに、「シナリオを書いたダルトン・トランボは、『ジョニーは戦場に行った』という映画の監督もしている政治的な脚本家。赤狩りを避けるため、最近までは彼の友人の名前がクレジットに載っていた。当時ハリウッド映画は弱者ばかり描くという理由で、共産主義のソ連のスパイが入り込んでいるのではと疑われていた。ハリウッド映画とは移民のユダヤ人が始めたもので、“差別は格好悪い”という意識を、映画を通じて植え付ける目的だった」と語り、学生たちは熱心に耳を傾けていた。
また、ウォルト・ディズニー製作のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」にも言及し、「実は子ども向けではなく、子連れで映画館に来た親へ向けて作っている。当時、男の成功は仕事だけじゃないということを主張した勇気ある珍しい映画」と熱弁。そして、「今のハリウッド映画では、夏は『イェーイ!』という商業目的の娯楽映画、秋以降はアカデミー賞を狙ったシリアスな映画が出てくる。それは21世紀になってマーケティングが入ったことが原因。昔の映画にはその垣根がなく、『メリー・ポピンズ』のように見た目は甘いお菓子だけど苦い薬が入っていた」と、独自のユーモアを交えながらハリウッド映画史を分かりやすく解説した。
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