「許されざる者」ベネチア上映 スタンディングオベーションに渡辺謙が涙
2013年9月9日 16:30
[映画.com ニュース] 渡辺謙主演の「許されざる者」が9月6日(現地時間)、第70回ベネチア国際映画祭で特別招待作品として公式上映され、現地を訪れた渡辺、共演の柄本明と柳楽優弥、李相日監督らが公式会見やレッドカーペットに出席した。公式上映では約10分間におよぶスタンディングオベーションが起こり、思わず目のうるんだ渡辺は李監督の手をとり、ふたりで高く手を掲げて観客の拍手に力強く応えた。
クリント・イーストウッド監督・主演でアカデミー賞を受賞した同名の名作西部劇を、明治維新期の北海道開拓時代に舞台を移し、日本映画として新たによみがえらせた意欲作。公式上映前の会見では、映画化の経緯や日本の歴史の中にどのように取り入れて脚色したのかといった点に質問が集中した。
「硫黄島からの手紙」以来、イーストウッドと親交のある渡辺は、「映画会社から連絡を入れる以前に、まず僕から(イーストウッドのプロダクションである)マルパソにメールをして、リメイクの話があるがどう思うかと聞きました。そうしたら、とても寛大に『やってみてはどうか』という返事をもらい、その後はこちらから直接コンタクトを取ることはありませんでしたが、彼自身も自分がかかわると作品に影響をすると思ったのか、自由にやらせてくれました」と経緯を説明。李監督は、「サムライの文化が滅び近代化に移った時代を背景に、先住民と入植者たちの、あまり語られることのなかった歴史に光を当てることは有意義だと思いました。勧善懲悪ではなく、渾然とした人間の本質を描きたかった」と作品に込めた思いを語った。
また、カンヌ映画祭で男優賞受賞経験のある柳楽だが、「大先輩たちとの共演にビビった」と撮影時の心境を告白。しかし、「李監督から『同じ土俵にいるのだから、負けちゃだめだろう』と言われて頑張った」と明かし、「この映画を撮り終えたいまは、『世界のユーヤ・ヤギラ』と言われるような俳優になりたい」と話して会見場を沸かせた。
その後に行われたレッドカーペットでは、ハリウッドでも活躍する渡辺にサインをねだるファンなども見られ盛況で、公式上映は午後10時からと遅い時間にもかかわらず、1000人の観客が映画を見守った。上映後は約10分間にわたるスタンディングオベーションが起こり、中には「せつなくも美しい映画」と涙を流す観客も。翌日の取材で渡辺は、「観客に届いた喜びと逆に自分自身が映画にひきずり込まれて恥ずかしかった」と感想を述べ、李監督は「(一夜明けて)何か夢から覚めた感じです」と話していた。
「許されざる者」は9月13日から全国公開される。
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