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黒沢清監督、佐藤健&綾瀬はるか起用で強めた“ある確信”

2013年6月1日 08:00

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新作を語った黒沢清監督
新作を語った黒沢清監督

[映画.com ニュース]黒沢清監督にとって実に5年ぶりとなる映画「リアル 完全なる首長竜の日」が完成した。自殺未遂で昏睡状態に陥った恋人の意識の中に潜入した主人公が目にする“真実”を描く本作。その描写から佐藤健綾瀬はるかという旬の若手を迎えたキャスティングに至るまで、そこには鬼才の新たな挑戦があった。

他人の意識の中に入り込むという設定はクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」を思い起こさせるが、監督自身「当然、気になったし、強く意識したわけではないけど参考にした部分はあります」と影響を受けたことを明言する。だが「インセプション」がまさにノーランの頭の中のイメージを映像化したものであるのに対し、本作は小説が原作として存在しており、原作を読んで映像化の難しさを強く感じたという。「これは僕がいままで何となく考えていた『映画とはこういうもの』という認識を変えなければできないんじゃないか、という緊張感は持っていましたね。心の中というのはどう撮れば面白いのか? 現実と非現実をどう描き分けるのか? 正直、自分が映画を撮ってきたノウハウでできるのかという不安はありました」。

だが撮影が始まると、そうした不安は霧が晴れるかのように消えていった。「不思議なもので、意識の中であれ現実であれ、生身の俳優さんがいて、目の前の何かを怖がったり立ち向かったりする姿は同じなんです。こちらが懸念していたほど、現実と意識の中の区別を明確につけずに見てもらえるんじゃないか? 主演の2人がとにかく大変な目に遭いながら頑張っている姿が伝われば大丈夫だといまは思ってます。『心の中はカメラでは撮れない』と思ってましたが、ひとつ大きな勉強になりました」。

加えて物語を語る上で大切にしたのは「ラブストーリーとして描くこと」だった。「ラブストーリーというのは2種類あって、ひとつは何も知らない2人があるとき出会って恋に落ち、難関を乗り越えて成就するというもの。もうひとつがすでに愛し合っている2人が、愛しているからこそ襲い掛かる難関や不信を克服して愛を貫き通せるかを描くもの。愛ゆえの試練であり、悲劇にもなり得る。僕は後者のラブストーリーをやりたかったし、そこで物語の結末にきっちりと決着をつけたかった」と語る。

メインキャラクターの2人は原作では姉弟という設定だが、それを恋人同士に変更。年齢もあえて原作よりも若くしたが「これまで、もっと年上の夫婦で愛ゆえの苦悩の物語というのはいくつも描いてきたけど、若いカップルの話は初めて。そこは挑戦でしたね」と語る。何がこの新たなチャレンジを決意させたのか? 黒沢監督は本作の前に撮影し、反響を呼んだ連続ドラマ「贖罪」の存在を挙げる。「いま思うと、『贖罪』の現場でつかんだ大きな手応えが、日本の20代の俳優はこんなに力があるのか、ということでした。いろんな人がいるのは知ってたけど、失礼な話『子役に毛が生えた程度だろう』と甘く見ていましたので正直、驚きました。だから今回の映画では、確信を持って若い2人でやってみたいと思ったんです」。

そこで白羽の矢が立ったのが「以前から気になっていた」という佐藤と綾瀬の2人。「佐藤くんは『龍馬伝』を見て、あんなに若いのに屈折や揺らぎが感じられて不思議な魅力があって、とにかく一度、一緒にやってみたかった。綾瀬さんは、実は取材やバラエティ番組で話しているのを見て気になっていたんです(笑)。本当に言うことが面白いので、一度会ってどんな人間か確かめたかったんです」。

佐藤に関しては今回の役とのつながりを感じるが、綾瀬に関してはコミカルな一面に魅力を感じ、今回の冷たい印象すら抱かせる役をオファーするとは意外な気もする。「これも『贖罪』のおかげなのかな? 不安はなかったです。彼女だからこそ、ハードで怖い、何を考えているか分からない謎めいた役が面白いと確信していました」。

リアル 完全なる首長竜の日」は、6月1日から全国で公開。

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