J・シュマッカー審査委員長、沖縄国際映画祭のさらなる発展に期待
2013年3月31日 11:20
[映画.com ニュース] 過去最多となる42万2000人の観客動員を記録し、華やかに幕を閉じた第5回沖縄国際映画祭。今年のコンペティションLaugh部門・Peace部門の審査委員長を務めたジョエル・シュマッカー氏に、8日間に及んだ映画祭を振り返ってもらった。
シュマッカー氏は、青春群像劇の名作「セント・エルモス・ファイアー」や「バットマン」シリーズなどを手がけたてきたハリウッドのベテラン監督。ワーナー・エンターテイメント・ジャパンの社長ウィリアム・アイアトンに説得され、今回の審査委員長を引き受けたという。「東京は何度も行っているけど沖縄は初めて。皆さんフレンドリーで、映画祭だけに留まらず町の人々もとても温かく迎え入れてくれた。それに地元の伝統料理が素晴らしいね! 1番のお気に入りはゴーヤ。それに沖縄そば、豆腐チャンプルー、紅芋アイスクリーム、さんぴん茶。沖縄は素晴らしいところだね」と沖縄を存分に満喫していた。
今年で5回目を迎えた同映画祭は、骨となるコンペティションのラインナップの充実をはじめ、地元に根ざした企画・桜坂映画大学や地域発信プロジェクトなど、さまざまな試みで規模を拡充させてきた。コンペには、ジャッキー・チェンが主演・監督を務めた自身最大のヒット作「ライジング・ドラゴン」、韓国で400万人を超える観客動員を記録したラブストーリー「建築学概論」、第85回アカデミー賞で作品賞ほか主要4部門にノミネートされた「ハッシュパピー バスタブ島の少女」など、国際色豊かな力作がそろった。シュマッカー氏も、「世界中の色々な地方から映画が集まってきて、行ったことのない地方のことも学ぶことができる。いわゆるスーパースターの物語でなく、一般的な人々を描いた作品が多いので、それぞれの地方の家族の価値観やユーモアを感じられる。そして、どの作品も最後はうまくまとまっているね」と好感触を得ていた。
沖縄国際映画祭はラフ&ピースをテーマに掲げ、笑いと平和を追求した作品をラインナップにそろえている。数多くの映画祭に参加してきたシュマッカー氏だが、「テーマがある映画祭は初めてだよ。映画祭ってだいたいが賞を決めて終わり。僕は勝手に特別賞をあげちゃったりするけどね(笑)。ラフ&ピースは、今の世界と時代にとって素晴らしいテーマだと思うよ。自分自身が笑って平和を追求していけば、世界はもっと良いものになる。人間が幸せになる秘けつは周りを幸せにすること。そう信じていれば、自分勝手な人にはなれないはず。これは私の人生哲学なんだ」とユニークなテーマに共感していた。
シュマッカー氏のほか、桃井かおり、デーモン閣下、クロード・ガニオンの3人が審査員に名を連ねたが、「みんな知識が豊富で頭の良い人ばかり。かおりのような強い女性がひとりでも審査員にいると心強い。彼女は女優でもあり監督の経験もあるので、見方も多角的。独自の世界をもっているデーモンもとても尊敬してるよ。彼の専門は音楽で映画の作り手ではないので、観客の目線で審査してくれる。クロードも、若い頃からたくさん映画を作ってきて大変さを良く知っているし、技術的なことも良く分かっている。個性の強い4人が集まったのでそれぞれ独自の意見があり、互いに尊重し合って良い審査ができたと思うよ」と充実した議論が行われたようだ。また、「技術力で判断するのではなく、監督と脚本家の伝えたいストーリーがきちんと伝わっているかどうかに最も注目した。僕はこれまでに27本の映画を作ったけど、いまだオーディエンスの感覚がある。いち観客として審査にあたったよ」と審査基準を明かした。
美しいビーチリゾートとして世界中から人気を集める一方で、米軍基地問題などさまざまな問題も抱えている沖縄。しかし、シュマッカー氏が見据える沖縄国際映画祭の未来は明るい。「僕は沖縄の問題に詳しくないから余計なことは言えないけど、誰もが問題を抱えているし、どの国も問題を抱えている。問題はそれらをどう対処するか。人って問題をどうにか乗り越えて、生き残っていくものだから」と前向き。そして、「もっともっと世界中から色々な人を招いたら、それがどんどん映画祭の成長につながっていくと思う。今この時代に沖縄とアメリカが一緒になって芸術を祝うなんて、70年前の第2次世界大戦からすれば考えられないことだった。それはこれからの希望につながると思う」と同映画祭のさらなる発展を祈った。
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