三池監督最新作「藁の楯」 静かな“熱さ”が充満する現場に潜入
2012年11月19日 13:00
[映画.com ニュース] 三池崇史監督による最新アクションサスペンス大作「藁の楯 わらのたて」の撮影現場がこのほど、ロケ地である愛知・四日市港周辺で報道陣に公開された。厳しい暑さが残る季節だったが、主演の大沢たかおをはじめ、共演の松嶋菜々子、藤原竜也、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗が緊迫感あふれるシーンの撮影に臨んだ。
映画監督でもある木内一裕の同名小説を原作に、残忍な凶悪犯を命がけで守るSPたちの葛藤(かっとう)を描く意欲作。8年前に少女への暴行殺人事件を起こし、出所したばかりの清丸国秀(藤原)の手により、政財界を牛耳る大物・蜷川(山崎努)の孫娘が惨殺される。全国に指名手配された清丸の行方はつかめず、ついに事件の3カ月後、蜷川によって大手新聞に「清丸を殺せば10億円支払う」という全面広告が掲載され、日本中が殺気立つ。身の危険を感じた清丸は福岡県警に自首するが、身柄を警視庁まで護送する間、警察組織から選ばれた精鋭5人は日本中の殺意から残忍な容疑者を命がけで警護しなければならなかった。
大沢、松嶋、岸谷、伊武、永山の5人がSP役を熱演。いつ、誰が、どこから襲いかかってくるか分からない極限状態のなか、それぞれが自身に“正義とは何か”を問いながら護送の任務にあたる。当日は容疑者移送中の護送車を舞台に、予測のつかない敵との緊迫した攻防シーンを撮影。元SPが常に現場で所作指導にあたり、三池監督の人物描写への強いこだわりがうかがえた。
念願の三池組初参加となった大沢は、「静かな“熱さ”がある。何が起きるか分からないまま現場に向かって、今日どんな風になるのかなとワクワクしながら緊張感をもって演じている。役者冥利に尽きる。最高です」と気合十分。話題性に富んだ原作にも興味があったそうで、「より良いものにしようというのと同時にプレッシャーもあるけど、怖いくらい疲れないしそれがとても心地よい。三池さんとの仕事は何もかもが挑戦。見えないものに向かって勝負をかけている」と手探りで役に挑んでいた。
同じく三池組初参戦の松嶋は、役づくりのためバッサリと短くしたショートヘアで撮影に臨み、「まずSPという役が挑戦。台本はあるけど、監督の思いで色々変わっていくのであるようでないようなもの(笑)。こんなライブ感、今までなかった」と新たな経験に期待をはずませた。6年ぶりの共演となる大沢とは息もぴったりで、「できあがりがどうなっているのか不安な部分もあるけど、現場の良い緊張感と暑さとリズムがいい感じで、前に進んでいる。とにかく大事に大事に、ワンシーンワンシーン重ねていくことに集中している」と神妙な面持ち。松嶋演じる白岩役は原作では男性の設定だが、映画では女性に変更されており「とても興味深かったし、とにかく三池監督とご一緒したいという挑戦だったので新鮮な気持ち。私がやる意味のある役にしてくれた」と感慨深げだった。
「SABU さぶ」(02)以来、約11年ぶりに三池組へ参加する藤原は、「豪華なメンバーの中、滅多にはできないであろう恵まれた環境でロケしている。監督の力で引っ張っていく現場は、隣で見ていてかっこいいなと思う」と改めて尊敬の念。残虐な凶悪犯という役どころには、「わりと意識せずにやらせてもらっている。心の中では揺れる部分もあるし色んな思いが出てくるけれど、ワンカットワンカットどう成立させるか、セリフと行間に集中している」と緊張感をみなぎらせた。
そんなキャストの期待を一身に背負う三池監督は、「どんな映画になるのかなと逆にワクワクしている。崖っぷちに立たされた瞬間に見える風景が一番楽しい。見る人だけが作られた夢を見るんじゃなくて、我々も夢を見ないと偽モノになってしまう」と飽くなき探究心で現場に臨む。また、松嶋とのタッグについて「実は大人の女性とは初めてで緊張している(笑)。昔のいわゆる業界のスターという職業と違い、今の役者さんは演じることを楽しんで、持ち場に対してすっと自然に立っている気がする」と率直な感想を語った。そして、「原作の木内さんが『エンタテインメントはこうなんだ!』って思いに満ちているので、木内さんに対してあいつにやらせて失敗したと思わせたくない」と決意をにじませていた。
「藁の楯 わらのたて」は、2013年4月26日に全国で公開。
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