高橋惠子23年ぶり主演の「カミハテ商店」で生と死を見つめる
2012年11月9日 19:00

[映画.com ニュース] 高橋惠子が23年ぶりの主演を務めた「カミハテ商店」が、11月10日から公開される。第47回カルロビ・バリ国際映画祭でワールドプレミア上映されコンペ12作品中1位の評価を受けるなど、海外での注目度も高い本作。初老の女性役に“老けメイク”で挑んだ高橋に、作品へ込めた思いを聞いた。
物語の舞台は、自殺の名所となってしまった断崖絶壁の近くに佇む一軒の古い商店。その店を営みながらひっそりと暮らす千代(高橋)は、自らの過去にまつわる孤独を胸の内に抱えていた。時々やってくる牛乳配達の青年、死を決意した見知らぬ男性など、様々な人との触れ合いを通して千代の心は次第に変化していく。
「やっぱり、作り手の意思が見えないといけないと思うんですよね」と語る高橋。製作に携わるすべての人たちの考えをくみ取りながら、真摯に現場に臨んだという。「どういう着地点を映画全体、そして監督が求めているのか。また最初の原案を考えてくださった女性が、どういう意図でこのラストシーンを書いたのか。そういったところをずっと考えていました。私は実際にそこに立って生身の体で演じなきゃいけないわけですから、作り手の思いを探りながらずっと撮影を進めていました」
そして、セリフが少なく表情や動きで表現するシーンが多い千代役については、試行錯誤を重ねたことを明かす。「実在していた人ではないし、これが正しいという答えがあるわけじゃない。人物に肉付けをしたりニュアンスを与えたりするのは、大変でもあり楽しくもありました」

本作は自殺を題材にした、生と死のドラマだ。高橋は映画を見る人に、生きることについて何かを感じてほしいと述べる。「『カミハテ商店』は、見る人が10人いれば10通りの感じ方があるような作品。妄想できる映画っていうんでしょうか(笑)。谷川俊太郎さん(詩人)が寄せてくださったコメントにあるように、言葉にならない手触りを感じさせてくれるんです。難しいことではなくて、『生きるって何なんだろう』ということを、感じてもらえたらいいなと思っています」
7月にはチェコのカルロビ・バリ国際映画祭に出席した。「まず、招待されたことにビックリしました。淡々と描かれた物語なので、そういうものが評価を受けたことに驚きとうれしさがありました。向こうでは2000人程の大勢のお客さんが見てくれたんです。評論家の評価でも、満点を入れてくださった方が3人もいらっしゃって。きっと好きな人は、ものすごく好きになってくれる映画なんだということが、その時にわかりましたね」
さらに、映画を介して見えた日本人の死生観についても考察する。「日本人の自殺に対する考え方はちょっと独特な気がすると(外国の人から)言われたんです。昔“腹切り”というものがあったくらいだから、そういう考え方が代々伝わってきた部分もあるのかなと気づかされました。現代の苦しい状況の中で自殺をする人がすごく多いと聞きますけど、何か(昔と)重なるものがあるのかなと思いましたね」。そして最後に穏やかにほほ笑んで、こう述べた。「何かを自分で考えたい映画を求めている人に、ぜひ見てほしいです」
「カミハテ商店」は、11月10日から全国で公開。
(C)北白川派
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