キューバ初のゾンビ映画監督、ブラックジョークでキューバの現実を語る
2012年10月26日 17:42

[映画.com ニュース] 「恋人たちのハバナ」(2007)で長編デビューを飾った、アレハンドロ・ブルゲス監督が脚本も兼ねた最新作「ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド」。キューバ史上初のゾンビ映画としてコメディタッチに仕上げ、“共産国キューバ”のイメージを覆す笑いを描いたブルゲス監督が、同作について語った。
キューバ危機から50年後のハバナで、怪事件が勃発。政府は反体制派が引き起こした騒動だと発表するが、中年男フアンは感染症により出現したゾンビの仕わざだと気が付く。“愛する人、殺します”をキャッチコピーに殺人代行社を設立し、ひともうけしようとゾンビ退治に乗り出す。
キューバは、フィデル・カストロ氏のもとアメリカ大陸で初めて社会主義政権が発足した。厳しい規制のなか、ブルゲス監督は幼少期に「死霊のはらわた」(サム・ライミ監督)を鑑賞し、ゾンビ映画の魅力に目覚めたという。その後、「パルプ・フィクション」(クエンティン・タランティーノ監督)と出合ったことをきっかけに、「僕は作家なんだ。『映画のために書く』ということは考えたことはなかったけれど、『パルプ・フィクション』を見て映画製作を学ぼうと決め、脚本を書き始めたんだよ」と映画業界に飛び込んだ。
ブルゲス監督は、ホラー文化が希薄なキューバで今作の製作に挑んだ。「ゾンビ映画を製作すれば、自分を取り巻く現実をサブプロットのなかで語ることができる。キューバとゾンビは完璧な組み合わせだった」と異色の組み合わせに自信をのぞかせる。そして、ゾンビ映画というフィルターを通して日常を捉え、「問題が起きたとき、キューバ人はどんな反応を示すか」といったキューバ社会を、ブラックジョークたっぷりに描写した。「僕が見せるキューバに現実味を持たせたくて、シーン、会話、映像、キャラクターすべてを現実から創造するように心がけた。ブラックユーモアのせいでにらまれたのは1度や2度じゃなかったけど、その価値はあったよ」と振り返る。
撮影中は社会情勢による苦労が多かったようで、難民がハバナから逃亡する場面は「100艘のいかだをハバナの海に浮かべるなんてできなかった(笑)。いかだ一艘(そう)ごとに許可が必要だったし、その場で撮ることも出来なかった。誤解される恐れがあったからね」。そんな規制のなかでも、いかだから「(1980年代)マイアミに行こうとして溺死した人が大勢いる。ゾンビが海の中で彼らを追いかけていたとしたら?」と、海底を歩いて渡るゾンビのアイデアをひらめき「これまでのゾンビ映画で見たことがなかったシーンを、キューバの現実と組み合わせた」と独自のシーンを生み出した。
今作でひときわ目を引くのは、オールやパチンコなどを武器にした奇想天外なゾンビの退治方法だ。「キューバでは銃は所持できないから、日常生活で使う物を道具にしたいと思って、オールを思いついた」と日常生活から着想を得た。一方で広場に集まるゾンビの群れを相手にするシーンは、政治的な意味を持たせようと意識。「最初、脚本にはゾンビの首を切るとは書いてなかったんだ。でも、頭を切り落としたほうが簡単だということになって、革命広場のシーンを思いついたんだ。その瞬間に、首を切ることが別の意味を帯びたわけだ。チェ・ゲバラの壁画のあるビルが背景に建っているし、他の場所と革命広場では意味が違うからね」
「ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド」は、10月27日から全国で公開。
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