アンジェイ・ワイダ監督、現実と虚構を融合させた新作「菖蒲」を語る
2012年10月18日 19:30

[映画.com ニュース] ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の新作「菖蒲」が、10月20日に公開される。「灰とダイヤモンド」や「カティンの森」など徹底したリアリズムに基づく歴史映画で知られているが、今作はヤロスワフ・イバシュキェビチの短編小説を映画化した文芸作で、ワルシャワ蜂起で息子を亡くした医者とその妻、一人の青年の関係を軸に、若さや青春、老いと病、生と死という深遠なテーマを描く。ワイダ監督が作品について語った。
主人公のマルタを演じるクリスティナ・ヤンダの夫で、ワイダ監督の盟友であった撮影監督エドウァルド・クォシンスキが撮影半ばで病死したことにより、ワイダ監督は映画を大きく改変した。ヤンダが夫と過ごした日々を語る独白シーン、原作を基にした「菖蒲」の物語、ワイダ監督も登場する撮影現場が映し出される三重構造となっている。
「デビュー作を撮った時、私は27歳で、その頃の私は、私たちはみな自分の映画を生きていて、生活など仕事のおまけにすぎないと感じていました。しかし、今の私は知っています。俳優は仮に自分のすべてを映画の役柄に捧げるとしても、常に自分自身であり続け、彼らの現実に変わるようなものなど何もないと」。ワイダ監督は、ヤンダから夫の最期の日々を綴った原稿を渡され、そこに監督自身のことも書かれていたことに胸を打たれ、本作を現実と虚構が融合した作品にしようと決意した。

夫を亡くしたヤンダの孤独を映す独白シーンでは、常に都会の孤独を見つめてきた20世紀アメリカを代表する画家、エドワード・ホッパーの油彩画「朝の日ざし」、「朝日に立つ女」の構図を意図的に用いた。ヤンダの悲しみが、窓から差す光とともに浮かび上がるような印象的なシーンだ。「私の目の前に、孤独な女性がホテルの部屋で過ごすホッパーの絵画が思い浮かんだのです。孤独について、あれほど胸を締め付ける絵を描いた画家はいません。(撮影は)美術担当に依頼し、ホッパーの絵を基にしたホテルの客室の内装を建ててもらいました」。
1950年代から86歳となった現在でも、精力的に作品を発表し続けているワイダ監督。なぜ次々と映画を撮るのか?という問いに、一生を学問に捧げたラビの寓話を交えてこう答えた。「死神が降りてきたら、その男(ラビ)は勉強をしていた。邪魔をしたくなかった死神は『じゃあ、後で来るよ』と言った。もしかしたら私は、このラビのようなものかもしれない。死神が『じゃ、もうちょっと待つことにするよ!』と言ってくれるのではないかと密かに願っているのです」。
「菖蒲」は10月20日岩波ホールほかで全国順次公開。
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