世界が注目のスペインの映像作家ホセ・ルイス・ゲリン監督が来日 幻の処女作を語る
2012年6月30日 20:10
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[映画.com ニュース] スペインの映像作家ホセ・ルイス・ゲリン監督の全長編作品を集めた特集「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」が6月30日東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで開幕。長編初監督作「ベルタのモチーフ」上映後、来日したゲリン監督がティーチインを行った。
1983年に発表された「ベルタのモチーフ」は、ゲリン監督が22歳の時に手がけた作品で、自然豊かな農村に住む思春期の少女の日常と内面を美しい映像と音で映しだす。フィルムの保存状態の問題で20年間誰の目にも触れられない幻の処女作となっていた。
ゲリン監督は「それまで実験映画を孤独に撮っていましたが、初めてチームを組んで作った作品です。ずっと1人で仕事をしてきたので、他の人とチームを組むことで自分の純粋さを侵される心配があって怖かったのですが、この作品で他人と意見を交換したりして製作することの楽しさを知りました」とおよそ30年前に撮影した本作を紹介する。
スペインの中央部カスティーリャ地方の小さな村で撮影を行った。「私の映画のほとんどは風景から入ります。この作品に関しては空虚な何もない場所を探しました。何もない風景の方が、1本の木や道にとてつもない意味を与えることができるからです」と説明。モノクロ撮影を選んだのも、多くの要素をそぎ落とした結果だという。「風景の中に絵を描いていきました。引き算をした後に残るもので自分の映画を作ろうと思ったのです」
観客から撮影当時に意識した監督や作品はあるかと問われると「私の映画の思い出とともに作りました。私がそれまでに見たロトチェンコ、ジャン・ルノワール、ロベール・ブレッソンやエリセの作品です。そこに広がる風景を思い出しながら作りました。その頃はまだ小津安二郎の映画を知りませんでした」と明かした。
そして最後に「私が興味があるのは人生と映画の中にある緊張感です。それと幻想と現実。この作品では主人公のベルタは幻想と現実を混同して、最後の別れ道でどちらに行くかを選びます。私がこの作品を撮った時はベルタよりちょっと年をとったくらいでした。それまで映画を通して世界と関係を持っていて、自分の経験の中で映画が中心でした。ですから本作を手がける際、20歳そこそこの若者が何を撮れるかまず考え、それは現実と幻想という関係だと思ったのです」と撮影当時の心境を述懐した。
「ミツバチのささやき」で知られるスペインの名匠ビクトル・エリセ監督は、ゲリン監督を「今のスペインでもっとも優れた映像作家」と称賛しており、日本では2010年に「シルビアのいる街で」が公開され、一躍脚光を浴びた。今回はゲリン監督初の特集上映ということもあり、初回上映は立ち見が出るほどの大盛況だった。
「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」では、「ベルタのモチーフ」、「シルビアのいる街で」のほか、ゴヤ賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞の「工事中」など8本を上映する。7月2日までの間に7回、ゲリン監督によるティーチインが行われる予定。映画祭は7月27日まで。
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