キム・サンマン監督、サイコスリラーでメディアのあり方を問う
2012年5月25日 15:08

[映画.com ニュース] 「夏物語」のスエと「オールド・ボーイ」のユ・ジテが共演した、サイコスリラー「ミッドナイトFM」が5月26日に公開される。今作は人気ラジオ番組の女性DJが、見知らぬ男によって恐怖に突き落とされる姿を描く。メガホンをとったキム・サンマン監督が、今作について語った。
ラジオ番組のDJを務めるソニョンは、娘の病気治療に専念するため番組を降板することになる。しかし最後の放送中、謎の男から「指示通りに曲をかけなければ家族を殺す」という脅迫電話がかけられ、捕らわれた家族の映像が送られてくる。
監督デビュー作「ガールスカウト」でクライムコメディに挑戦したキム・サンマン監督が、緊迫したスリラーに挑戦。「切り離されたふたつの空間にいる人物を対比させながらスリルを盛り上げていく」という構造を保ちながら、脚本を練り上げた。「初稿の段階では今よりもっと大勢の人が、凄惨に殺されるホラー映画的な内容だったんです。そこから自分の好きなスリラーに寄せていき、メディアと受け手の関係というテーマを加え改稿を重ねました」。
キム・サンマン監督は、主人公ソニョンを演じたスエを「韓国では彼女に対して『落ち着いていて優雅で清楚』というイメージがありますが、そういう先入観を払拭したいという本人の希望もあり、また私も彼女にちまたのイメージとは異なる『芯の強さ』を感じていたので、本作ではその内なる強さを存分に表現してほしいと思った」という理由から起用。結果としてスエは、韓国2大映画賞の“青龍映画賞”で、主演女優賞を受賞する成功を収めた。

対する冷酷な殺人鬼ハン・ドンスは、脚本執筆段階からジテの起用を検討していたという。「劇中でドンスは詭弁(きべん)を用いますが、それを聞いたときに相手が思わず納得してしまうような説得力がほしいと思ったんです。セリフの内容も重要ですが、それをしゃべる声自体にも魅力がなければならない。出てきただけでオーラを見せつけるような俳優が必要」とオファーした。
今作は、サイコスリラーという形を通し「メディアと受け手の間に生じる問題」も浮かび上がらせた。発信する側に立つキム・サンマン監督は、「この作品は見る人の立場によって感じ方が違うはず」と語っている。「かつてのメディアは発信する側からの一方通行でしたが、今はインターネットや移動通信が発達したことによって受け手も活発に意見を言えるようになり、互いに大きな影響を及ぼし合う関係になりました。そんな時代に我々はどのようにメディアと接していけばいいのか」と問題提起する。
「クリエイティブな立場にいる人間が大衆に向かってなにを送り出すのも、私自身は自由だと思います。逆にその自由を奪ったり、抑圧するのはよくない。だからこそ、受け手もちゃんと主体性を持ち、批判精神をもって受け取れば、メディアのあり方も互いの関係性も健全に発展していくのではないでしょうか」。
「ミッドナイトFM」は、5月26日から全国で公開。
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