カンヌでキアロスタミ最新作に温かい拍手 「愛と誠」には笑い起こる
2012年5月23日 16:30

[映画.com ニュース] 第65回カンヌ映画祭で5月21日(現地時間)、日本を舞台にしたアッバス・キアロスタミ監督の「ライク・サムワン・イン・ラブ」と、三池崇史監督の「愛と誠」が相次いで上映された。
主演の高梨臨と奥野匡、加瀬亮がそろって上映に駆けつけた「ライク・サムワン・イン・ラブ」は、秘密裏のデートクラブでアルバイトをする女子大生・明子と、そこで出会った老教授、明子の恋人の3人をめぐる物語。説明的な描写が省かれ、ミステリーやサスペンスを含みながらも淡々とストーリーが進む映画への反応は、プレス試写で拍手とブーイングに分かれたが、公式上映では監督への敬愛が感じられる温かい拍手が響いた。会見では、俳優たちが時に何回もテイクを重ねたり、息を切らせるシーンでは本当に俳優に走らせるといった、キアロスタミ独特の演出方法を打ち明けた。
三池監督とキャストのスケジュール調整ができず、やむなくメインゲストが不参加となった「愛と誠」は、夜中の上映にもかかわらず、三池ファンで会場が埋まった。原作はヨーロッパでは知られていないものの、日本の人気漫画をミュージカル仕立てで映画化した「かなりの暴走映画」という噂が注目を呼んだようだ。
上映中はところどころで笑いが起こるなど、「ツボ」は伝わっている手応えだった。せめて三池監督が参加していたら、上映後の反応はもっとダイレクトに盛り上がったのではないかと思われただけに残念だ。
開催から1週間が過ぎた現在、評価の高い作品は、ミヒャエル・ハネケが老人夫婦の介護問題を扱った「Love」、トマス・ビンターベアが実話のえん罪事件を元にした「The Hunt」、2007年に「4ヶ月、3週と2日」でパルムドールに輝いたクリスチャン・ムンジウの新作「Beyond the Hills」など。マリオン・コティヤール主演のジャック・オディアール監督作「Rust & Bone」もおおむね評価は高いものの、オディアール監督にしてはオーソドックスな作りであると同時に、悲劇的な要素で埋め尽くされているため、好き嫌いを分ける形となった。
映画祭後半には、ウォルター・サレス、レオス・カラックス、デビッド・クローネンバーグ、リー・ダニエルズらの期待作が控えているだけに、賞の行方はまだ予想がつかないところだ。(佐藤久理子)
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