山田洋次監督「東京家族」、橋爪功&吉行和子主演で再始動
2012年2月4日 06:00
[映画.com ニュース] 山田洋次監督の81作目となる新作「東京家族」が、3月1日にクランクインすることがわかった。配給元の松竹が2月3日、同社で発表。昨年3月の東日本大震災を受け、山田監督の意向で製作が延期された同作が、橋爪功、吉行和子、中嶋朋子を新キャストに迎え再始動する。
小津安二郎監督の不朽の名作「東京物語」をモチーフとした今作は、1年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、昨年4月1日にクランクイン予定だった。しかし大震災が発生し、山田監督は「このままそ知らぬ顔で、すでに完成している脚本に従って撮影していいのだろうか」と悩み、製作延期という苦渋の決断を選択した。
山田監督と平松恵美子が新たに書き直した脚本は、2012年5月の東京の物語。撮入のぎりぎりまで日本の姿を見たいという山田監督の希望もあり、今年に入ってから改稿作業に取りかかった。クランクインの時期は昨年末に決まったそうで、同社の深澤宏プロデューサーは「いろんなことを乗り越えてたどり着いた。万感の思い。全力を尽くしてこの作品に挑みたい」と決意を明かした。
主人公の平山周吉役は当初、菅原文太が演じる予定だったが、スケジュールの都合で橋爪にバトンタッチ。妻・とみこ役の市原悦子は、「霧の旗」(65)以来の山田作品となるはずだったが、撮入に際して行った健康診断でS状結腸腫瘍が見つかり、2月1日に都内の病院に入院。今後、検査を経て手術をする予定だが、命に別状はないという。そのため、1月下旬に急きょ吉行の“登板”が決定し、衣装合わせなどはこれから行う。
また、室井滋の出演で発表されていた周吉・とみこ夫妻の長女役には、中嶋が臨む。室井は舞台「菊次郎とさき」の公演が控えており、撮影タイミングがどうしても合致しなかった。山田監督から直接説明を受けた3人は事情を理解し、「ぜひ頑張る。一生懸命、良いものをつくりましょう」と意欲的な姿勢で、撮影を心待ちにしているという。
作品の内容は、小津監督の「東京物語」へ捧げるオマージュという点に変化はない。震災後の日本を描いているだけに、主人公夫婦の次男・昌次(妻夫木聡)と恋人の間宮紀子(蒼井優)が福島のボランティアで出会ったという設定になるなど、芝居やセリフに新たな要素が加わった。なお、当初の予定通り、西村雅彦、夏川結衣、林家正蔵は出演する。
撮影を1カ月後に控えた山田監督は、「長く続いた不況に重ねて大きな災害を経験し、新たな活路を見いだせないまま苦悩する今日の日本の観客が、大きな共感の笑いと涙で迎えてくれるような作品にしたいと、心から願いつつ撮影を開始したいと思います」とコメントを寄せている。
「東京家族」は、2013年1月に公開予定。
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