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渡辺謙「はやぶさ」引っさげ東北駆けめぐる 被災者との約束果たす

2012年1月16日 05:00

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舞台挨拶前に気仙沼市内を見て回った渡辺謙
舞台挨拶前に気仙沼市内を見て回った渡辺謙

[映画.com ニュース] 俳優の渡辺謙が、主演しプロジェクトマネージャーを兼ねた新作映画「はやぶさ 遥かなる帰還」を引っさげ、東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた東北地方(岩手、宮城)を再訪した。被災地支援のメッセージサイト「kizuna311」の発起人を務める渡辺は、これまでに4度(昨年4、5、7、12月)にわたり被災地の避難所を訪問。「映画を作ってもってくるね!」と交わした被災者との約束を、1月14、15日に合計9回の試写会を行うことで実現させた。

渡辺は、メガホンをとった瀧本智行監督とともに総移動距離約370キロ、総移動時間9時間15分を駆け抜けた。今回の特別試写会は、実際に訪問した被災地に住む人々に来場してもらいたいという思いから、テレビスポットなどによる大々的な試写会告知は敢行しなかった。一部の仮設住宅へのポスター掲示と専用応募ハガキの設置、各自治体の広報誌など限定的なメディア告知ながら、6000通1万2000人分の応募が寄せられた。

試写会が行われたのは、岩手・宮古のみやこシネマリーン(4回)、大船渡市民文化会館、宮城・気仙沼市民会館、ワーナー・マイカル・シネマズ新石巻、ワーナー・マイカル・シネマズ名取。満面の笑みを浮かべて登壇する渡辺の姿に、各地のファンは拍手喝さいで出迎え、感激のあまり涙を流す人の姿も。そんな人々に対し、渡辺は「12月にドキュメンタリー番組の取材で気仙沼を訪れたとき、船の音で目が覚めた。市場へも行きましたが、街が呼吸をしている感じがしたんです。5月に来たときは、街の音、人が生きているという息吹がしなかった。少しずつ前進しているんだなという感慨を抱いて、東京へ帰ったことを覚えています」と語りかけた。

気仙沼市民会館で舞台挨拶に立つ15日の朝、スタッフが運転する車に乗り込んだ渡辺は市内にいた。津波の被害にあい御神体だけが残された一景島神社で、どんど焼きを行っている人々と出会ったそうで「炎の中に焼かれていく注連(しめ)飾りを見ていて、今年のどんど焼きは格別な思いがあったんだろうなとひしひしと感じました。この炎が、神さまに届くといいなと思いました」と万感の思いを込める。

NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で、伊達政宗を熱演した渡辺。ワーナー・マイカル・シネマズ新石巻では、「僕は東北に育ててもらったんです。東北が舞台の作品に育ててもらったのだから、少しでも恩返しできれば」と話す。さらに、震災後に行われた撮影で、劇中のセリフ追加を瀧本監督に申し出たことも告白。「『はやぶさに故郷(ふるさと)を見せてやりたい』と加えたかったんです。はやぶさが見た地球は、帰還する2010年6月の地球の姿だったかもしれないし、震災後の姿だったかもしれない。どんな故郷でも、皆さんの心の中の故郷を、もう1回はやぶさに見せたいと思って……」と声を詰まらせた。

また渡辺はこの日、1月25~29日にスイス・ダボスで行われる世界経済フォーラムの年次総会(通称・ダボス会議)への参加を発表。これまでに「U2」のボノやアンジェリーナ・ジョリーが出席しているが、日本人の俳優として正式招待を受けたのは初めて。25日(現地時間)に各国の有識者を前にスピーチを行うほか、近隣の劇場で今作のダイジェスト版(約25分)と震災の様子を世界に発信するためのドキュメンタリー映像(約22分)を上映し、東北地方の現状と日本の技術力についてプレゼンテーションするという。「釜石など、映画をかける場所がない地域もある。次の作品も、その次の作品も、もって来たい」。渡辺の被災地支援は、まだまだ続く。

はやぶさ 遥かなる帰還」は、2月11日から全国で公開。

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