巨匠タル・ベーラ監督が来日 最後の作品、映画界への思いを語る
2011年11月23日 10:00
独自の哲学と映像美で映画を撮り続け、ジム・ジャームッシュ、ガス・バン・サントら映画界にも多くの支持者を持つタル・ベーラ監督だが、本作が最後の作品と表明しており、「34年間映画を作り続けてきて、これは非常に長い道のりでした。そしてその間、私は人間というものを理解しようと、人生というものにより近づこうとしてきました。そして、自分が見る世界を人々に伝えようとしてきました。今回の作品に入る前に、これが最後の作品になると予感していました。自分の仕事は終わったと感じています。言いたいことはすべて語りつくしました」と胸中を明かす。
現在の映画を取り巻く世界の状況について強い意見を持っていると話し、「ロスを訪れておかしいな、と思ったのが映画にかかわっている方々が映画をショービジネスの一部と信じていること。自分はそうは思いません」と断言する。
そして、「映画は第七芸術であると思います。観客は知的で賢いので、作り手としてはベストを尽くさなくてはならないと思っています。観客は娯楽しか求めていないだろうと考え、ファーストフードの様な形でやることは可能ですが、しかし、私はそれぞれの観客が人格を持っていると思っているので、彼らの何かに触れるような作品を作らなければ」と強い口調で持論を展開した。
今後については、「未来とはどういうことかは分かりませんが」と前置きしたうえで、「今でも映画作家であることははっきりしています。プロデューサーとして、今の悲しい映画業界の状況の中で、映画を作る場がない方々を助けたい。そして、もう一つは教えること。若い人たちに映画という言語がいかに色彩豊かなのかを知ってほしい。勇気を持って自分を表現すること、そしてその世界を他の人々に伝えてほしい」と真しなまなざしで語った。
イタリア・トリノの広場で鞭(むち)打たれ疲弊した馬の首をかき抱き、そのまま発狂したという哲学者ニーチェの逸話を題材にした本作は、馬のその後を追い、馬とその飼い主である親子の貧しく単調な生活から、生と死、人間の尊厳を重厚なモノクロームの映像で描き、第61回ベルリン映画祭銀熊賞と国際批評家連盟賞をダブル受賞した。
「ニーチェの馬」は2012年2月、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
(C)Marton Perlaki
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

映画「F1(R) エフワン」
【語れば語るほど、より“傑作”になっていく】上がりきったハードルを超えてきた…胸アツをこえて胸炎上
提供:ワーナー・ブラザース映画

たった1秒のシーンが爆発的に話題になった映画
【この夏、絶対に観るやつ】全世界が瞬時に“観るリスト”に入れた…魅力を徹底検証!
提供:ワーナー・ブラザース映画

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

186億円の自腹で製作した狂気の一作
【100年後まで語り継がれるはず】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画は!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

すさまじい映画だった――
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

“生涯ベスト級”の絶賛、多数!
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

究極・至高の“昭和の角川映画”傑作選!
「野獣死すべし」「探偵物語」「人間の証明」…傑作を一挙大放出!(提供:BS10 スターチャンネル)