新藤兼人監督最後の作品を天皇陛下が鑑賞 「救いがあるのがいいですね」
2011年7月13日 22:14
[映画.com ニュース] 新藤兼人監督の第49作「一枚のハガキ」のプレミア試写会が7月13日、東京・有楽町朝日ホールであり、天皇陛下が同作を鑑賞した。本作をもって監督業引退を宣言している新藤監督は、今年99歳を迎え、日本最高齢の映画監督としても知られている。同作は、32歳で召集された新藤監督の実体験をもとに、戦争の愚かさと反戦をうたった人間ドラマ。上映終了後、新藤監督は「『いかがでしたでしょうか』とお尋ねしたら、『ラストシーンで助かりましたね。救いがあるのがいいですね』と仰いました。そして僕は『新しい日本です』とお答えしました」と、天皇陛下からの感想について語った。
試写会には、新藤監督と主演の豊川悦司、大竹しのぶが出席した。客席で天皇陛下とともに並んで、作品を観賞した豊川は「天皇陛下が隣でじーっと食い入るようにご覧になっているのがとても印象的でした。最後に拍手をされているときもすごく満足されているような印象を受けました」と天皇陛下の鑑賞時の様子を話した。
大竹は、「ご苦労されましたか?」と天皇陛下から質問を受け、「苦労したけれど報われました」と答えたという。そして「(新藤)監督が陛下に『新しい日本です』と仰っているのを聞いて、その言葉に涙しました。最初はすごく緊張しましたが、次第に映画に入り込んでいって最後には心から拍手を送って頂いて、本当にうれしかったです」としみじみと語った。
当初は両陛下で鑑賞する予定だったが、皇后陛下は頸椎(けいつい)症性神経根症の痛みのため、試写会前に新藤監督らと懇親ののち御所に戻り、天皇陛下ひとりで鑑賞した。天皇陛下が新藤監督の作品を公の場で鑑賞するのは、1999年に日本映画名作鑑賞会で「裸の島」を鑑賞して以来、12年ぶりとなる。
大竹は、皇后陛下が「今日は映画を見られなくて申し訳ございません。後日、別の機会で必ず見ます。でも、監督とお会いできてとてもうれしい」と話したと明かした。さらに、「両陛下のお姿を見て、とても優しい感じがして、素敵なおふたりだね、と豊川さんと話していました」と両陛下の印象を語った。また、皇后陛下は豊川に、豊川の昔の出演作を見たことを話したという。
「一枚のハガキ」は、戦争末期に100人の中年兵が招集され、宝塚に赴任する松山啓太(豊川)は、フィリピンへ赴任となる森川定造(六平直政)の妻・友子(大竹)から一枚のハガキを託される。森川は自らの死を予感し、松山が生き残ったらハガキを読んだと妻に伝えるよう依頼する。終戦後、松山はわずかな生き残り兵士となり故郷に戻るが、村で彼を待つ者は誰も折らず、友子を訪ねる……という物語。8月6日からテアトル新宿、広島・八丁座で先行公開、8月13日から全国公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。