函館発「海炭市叙景」公開 ノロで欠席の熊切監督もホッ
2010年12月18日 15:02
この日は、メガホンをとった熊切和嘉監督も登壇予定だったが、ノロウイルス感染症に侵されて欠席。手紙が寄せられ、「なんとノロウイルスにやられてしまい、本当に残念ながら出席できません。こうして無事に初日を迎えられてうれしく思います。自分にとっても転機となった作品。劇場を出た後も、海炭市の人々に思いをはせてください」と訴えていた。
同作は、芥川賞候補に5度ノミネートされながら41歳で自殺した北海道・函館出身の作家、佐藤泰志さんの遺作を映画化。多くの函館市民が映像化を切望し、大規模な募金活動が奏功して予算4000万円のうち1500万円が集まった。18編で構成された小説のなかから5つの物語を抽出し、バブル崩壊後の不況に苦しむ市井の人々の、ささやかながらも必死に生きる姿を丹念に描く。
初の父親役に臨んだ加瀬は、「アンテナ」以来となる熊切監督とのタッグ。「監督は全然変わっていなかった。役者の近くでモニターを通さずに見てくれる監督は今、あまりいない。期待に応えようと、自然と体が動いていくことがありました」と振り返った。竹原は、「映画の撮影で函館へ行ってくるぜって友だちに言う自分が何となく誇らしかった」と笑顔をのぞかせた。
12月5日(現地時間)にフィリピンの第12回シネマニラ国際映画祭のコンペティション部門で、グランプリと最優秀俳優賞をダブル受賞したが、さらに17日には2010年松本CINEMAセレクト・アワード最優秀映画賞を授与されたことも発表された。この日までに先行上映されている函館を含む8スクリーンで公開。今後も、全国約60スクリーンでの順次公開が決定している。