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父デビッド・ボウイも喜んでくれた、まな息子の監督デビュー作「月に囚われた男」

2010年4月2日 19:05

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ミュージシャンにはならずに 映画監督に
ミュージシャンにはならずに 映画監督に
photo by Rodene Ronquillo

[映画.com ニュース] 09年1月にサンダンス映画祭で初上映されて以来、世界各国の映画祭をにぎわせ、最終的にはナショナル・ボード・オブ・レビュー(米国)と第64回英国アカデミー賞で新人監督賞を受賞した新鋭ダンカン・ジョーンズ監督のデビュー作「月に囚われた男」が、4月10日より日本公開となる。同作は、自称「SFマニア」のジョーンズ監督が、人間探求という哲学的な問いを核とする本格的なSF映画の復興を目指して作り上げた傑作だ。

「いまのSF映画はエフェクトに重きを置きすぎていて、未来を題材にして基本的な人間の資質について新鮮な観点から考えさせてくれるというSFの本質的な部分から随分離れてしまった。だから僕は、思いやりや人間らしさといったものをいかに定義するべきかという問題に改めて取り組みたいと思ったんだ」

物語の舞台は、月の裏側。エネルギー資源を採取し、地球に送るために巨大企業から派遣されたサムは、たったひとりで黙々と仕事をこなしていた。だが、任期満了の3年を目前に、サムとうりふたつの男が現れる……。製作費は500万ドル(約4億5000万円)、撮影期間は33日間という低予算作品ながら、いまのハリウッド大作では滅多にお目にかかれないほどの強いメッセージを内包するSF映画となった。

「この映画はSF映画ファンのための映画といってもいい。だから、過去の名作へのオマージュが当然入っている」とジョーンズ監督が語る通り、「2001年宇宙の旅」「サイレント・ランニング」「アウトランド」「ブレードランナー」といった名作へのオマージュが数多く散りばめられている。そんな筋金入りの「SFマニア」が生まれるきっかけを作ったのが、父親で伝説のロック・スター、デビッド・ボウイである。

「父は僕が小さなときから、とにかく色々な映画を見せてくれた。なかでもよく覚えているのがキューブリックの『2001年宇宙の旅』と『時計仕掛けのオレンジ』。どっちを最初に見たかは覚えてないけど、父は僕があまりおびえないように隣に座って一緒に見てくれたんだ」

だが、「人間的な面はともかく、アーティスティックな面での父親からの影響はほとんどない」とキッパリ。

「確かに、父の作品はSFに強い結びつきがあるかもしれないけど、僕は彼の音楽にはあまり興味がなかった。だから、ミュージシャンになろうだなんて思ったことは一度もない。僕はどちらかというと、コンピューターゲームとかスポーツが好きな少年だったんだよ。まあ、それが僕の父親に対する唯一の反抗だったのかもね(笑)」

39歳という遅めの映画監督デビューとなったが、子どものころから映画監督になることを夢見ていたのだろうか?

「確かにそうなんだけど、随分時間がかかってしまったね。小さいときの父親との趣味のひとつに、ストップモーション・アニメをつくることだったんだけど、長いこと、自分には勇気がなかったんだと思う。多分、心のなかでは、映画を作りたいと思っていたんだけれども、学業で、大学、大学院とそのまま進んでしまい、大学院に在籍しているときにやっと、これは僕のやりたいことじゃない、僕は映画を作りたいんだと思い、そこでようやく父と話したら、喜んでくれたんだ」

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