あの「バグダッド・カフェ」が再公開 パーシー・アドロン監督に聞く
2009年12月4日 18:33
[映画.com ニュース] 日本では1989年に公開され、当時のミニシアター・ブームを象徴する名作となった「バグダッド・カフェ」が、約20年の時を経て「ニュー・ディレクターズ・カット版」として公開されることになった。メガホンをとったパーシー・アドロン監督は、当時の大ヒットを「まったく予想していなかった」と振り返る。
「これは天国からではなく、モハべ砂漠からの贈り物だね。舞台となったルート66にある“バグダッド・カフェ”では、今1ダースくらいある分厚いゲストブック(来客名簿)を展示しているんだが、地球上のさまざまな場所から訪れた人たちが、この映画への愛を綴っているんだ。胸が熱くなったよね」
アメリカ南西部モハベ砂漠にある小さなモーテルを舞台に、女主人ブレンダとドイツからの旅行者ジャスミンとの触れ合いや風変わりな常連客たちの人間模様を描く同作。デジタルリマスターを施した「ニュー・ディレクターズ・カット版」は、全てのカットの色と構図(トリミング)を新たに調整し、上映時間はオリジナルより17分長い1時間48分となった。
「これは再編集した『ニュー・ディレクターズ・カット版』というより、僕が最初に編集した『ファースト・ディレクターズ・カット』と呼ぶべきものだ。このバージョンは眠れる森の美女が目覚め、汚れてめちゃくちゃになった複製ネガから解き放たれた、という感じだね(笑)」
「ベルリン 天使の詩」(87年/ビム・ベンダース監督)、「ニュー・シネマ・パラダイス」(89年/ジュゼッペ・トルナトーレ監督)などとともに、当時のミニシアター・ブームを牽引した同作だが、今の日本ではそのミニシアターが絶滅の危機に瀕している。
「ドイツでも状況は似たようなものだが、これは昔から繰り返されてきたことで、フェリーニ、オーソン・ウェルズ、トリュフォーなど偉大な監督はみんな、映画会社から上映を拒否されたり、主流の映画館とアート系の映画館との闘いの板挟みになったりして苦しんできた。それは今日に至るまで変わっていない。だけど、いい映画を見る方法は他にもある。例えばクラブ、公共施設、美術館、フェスティバル(映画祭)、それにDVD。もちろんの僕の映画は劇場で見てもらいたいけどさ(笑)」
自らの代表作に「20年間望み続けていたことの全てを盛り込んだ」というアドロン監督。現在は作曲家グスタフ・マーラーの晩年を描く映画を準備中だという。
「バグダッド・カフェ/ニュー・ディレクターズ・カット版」は、12月5日より東京・渋谷のユーロスペースにてロードショー。