北野武監督、製作中の新作ヤクザ映画が「面白くて仕方ない」
2009年11月21日 18:39
[映画.com ニュース] 第10回東京フィルメックスが11月21日、開幕。東京・御茶ノ水の明治大学アカデミーホールでは、北野武監督が第10回記念シンポジウムに登壇し、特別講義を行なった。
監督デビューから20年、今や「世界のキタノ」と呼ばれるようになった北野監督。初期のころは苦労も多かったようで、「映画界はおごり高い人が多く、よそ者に冷たい。『素人なんかに撮れるわけがない』と思われていた。オレのことを“監督”と呼ぶのはヤクザだけ」と自虐的に笑った。さらに、「テレビは妥協せずに作っているけれど、映画は妥協してつくっている部分がある。お金を払って見てもらうものだし、あまり独りよがりなものを押しつけるべきではないから」と意外な持論を展開。これには、長年にわたり北野作品に携わってきた森昌行プロデューサーも「新鮮ですね」と驚いていた。
そして、「昔は演芸場で毎日ネタを変えていたので、映画でもそうしてきたけれど、疲れ果てちゃって(笑)。今は(原点でもある)ヤクザ映画を撮っていますが、面白くて仕方ない」と現在製作中の15本目の新作(タイトル未定)について言及。キャスティングに関しても、悪役のイメージがついていない三浦友和、椎名桔平、加瀬亮、北村総一朗を起用し、「これまで割と同じ俳優さんと仕事をしてきたけれど、今回は全部入れ替えています」とうれしげに語った。
その後、ホームページに寄せられた質問に答えるコーナーでは「クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』をどう思うか?」との質問に、「つまんなかった。老人と青年の触れ合いのきっかけの描写がヘタ」とバッサリ。司会者から、「これまで殺す側を演じてきたイーストウッドが殺される側に回った、俳優として最後の作品になるかもしれない」という紹介を聞き、「今やっている作品のことを考えると……ちょっとドキッとするなあ」と意味深発言。これまで監督と俳優を兼任してきた監督だが、今のところ監督に専念するという選択肢はないようで「森繁(久彌)さんみたいに“ただいるだけ”って俳優もいいかな。ほかの人の作品に出演して、わざとヘタに演技して映画をダメにしてやりたい」と最後まで毒舌は衰えず、会場は大爆笑だった。
第10回東京フィルメックスは11月29日まで開催中。