山田洋次監督の80作目は温かく悲しい反戦映画。「母べえ」完成会見
2007年12月12日 12:00
[映画.com ニュース] 太平洋戦争前夜から戦後にかけての東京を舞台に、夫を投獄されながらも2人の娘のために懸命に生き抜いた1人の母親を描いた山田洋次監督の新作「母(かあ)べえ」が完成。12月11日、東京・日比谷のザ・ペニンシュラ東京にて完成記者会見が行われ、原作者の野上照代氏、山田監督以下、主演の吉永小百合、浅野忠信、檀れい、笑福亭鶴瓶、坂東三津五郎らが出席した。
本作は、黒澤明監督のスクリプターとして知られる野上氏による自伝小説「父へのレクイエム」を映画化した反戦ドラマ。完成した映画について野上氏は「23年前にノンフィクションで応募した私のつたない作文のようなものが、このような素晴らしい映画になるなんて夢にも思いませんでした。この映画が作られたことで大変感謝しているのですが、それは、私自身があまり知らなかった父親のこと、そして、あの時代について色々調べてくれたことです。私はその調べてもらったものを読んで、今頃になって父親を尊敬しています(笑)。父や母がこの映画を見たらとても喜ぶと思います」と挨拶。
そして、本作が80作目の長編映画という名匠・山田監督は「今から60数年前に、日本人だけで200万人以上、世界中では2000万人以上が死ぬというすさまじい戦争をしたにもかかわらず、未だに世界では戦争が無くならない。僕は当初、戦争の映画を撮るつもりではなく、お茶の間の映画を撮るつもりでしたが、結果的にこの映画では(お茶の間の)向こうに戦争が見えているっていうことが、でき上がってみて分かりました」としみじみと本作の感想を語った。
「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」(74)以来、山田監督とは33年ぶりの仕事となった主演の吉永は、本作について「子供の頃に、そして映画界に入ってから見た、松竹・大船の映画には、家族の絆など温かいぬくもりのようなものがあって、若い頃はとても憧れていました。それから時間が経って、こういった形で松竹の伝統を受け継いだような山田監督の温かく悲しい映画に出演できてとても嬉しいです」と語り、会見をしめくくった。
「母べえ」は08年1月26日より全国ロードショー。