2054年、パリ。フランス製近未来ノワールの監督に聞く
2007年7月13日 12:00
[映画.com ニュース] 2054年のパリ、行方不明の女性科学者の行方を追う刑事を描くフランス製近未来フィルム・ノワール「ルネッサンス」(7月14日公開)。そのモノクロームの線画で描かれた世界は、まさに“動くグラフィック・ノベル”。その監督クリスチャン・ボルクマンに聞いた。
世界の映画祭で32もの賞を受賞した95年の短編SF「Maaz」(99)に続く本作は、ボルクマン監督の初の長編となる3Dアニメーション。製作のプロセスで“モーション・キャプチャー”の技術を駆使しているという共通点から、実写映画「シン・シティ」やロトスコープ・アニメーション「スキャナー・ダークリー」との類似性を指摘されることが多いそうだが、全く違う次元でスタートさせた作品なのだ。「この映画を作り始めたのは28歳で、今はもう35歳」と同監督。“絵を描くこと”“3Dを操作すること”“俳優に演技をつけること”の3つの次元で作業しなければならず、結局7年の歳月を要したのだという。「(刑事役の声で出演する)ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンド役に決まる前で本当に助かったよ(笑)」
だが、フリッツ・ラング監督の「M」に代表される20世紀前半のドイツ表現主義映画、また大友克洋監督の「AKIRA」に代表される日本のアニメなど、映像表現をする上で影響を受けた映画は少なくないという。中でも大きな影響を受けた彼が大好きだという作品が、押井守監督の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」。「雨のシーンがとても美しいんだけど、ゆったりとしたリズムが好きだね」とその映像が醸し出すリズムは本作にも引用されている。
また、物語の世界観で多くの共通点が見いだされるのは、リドリー・スコット監督の近未来SF「ブレードランナー」だろう。「大好きなのは、未来を予知しているところ。まるで今の世界がこうなることを知っていたみたいに感じる。それに、僕がこの映画を作り始めた28歳の頃はああいうハードボイルド的な世界観をカッコイイと思っていたんだ。夢と現実の境界線があいまいになるというあの状況には、今も惹かれている。今後もそんな物語を描いていくと思う」