巨匠・山田洋次から大目玉!「出口のない海」佐々部清監督
2006年9月12日 12:00
太平洋戦争末期、2度と帰れないと知りながら、日本軍最後の秘密兵器「回天」に乗り込むことになったひとりの元甲子園優勝投手の生き様を通して、生きることの意味を問いかける感動大作「出口のない海」。04年の映画賞を総なめにした「半落ち」同様、再び横山秀夫の原作に挑んだ佐々部清監督に話を聞いた。
脚本を担当した巨匠・山田洋次監督からの直々の依頼によって、本作のメガホンをとることになった佐々部監督。「今回の話をいただいたときは、戦争を知らない自分が“戦争”を撮っていいのだろうかと考えましたが、寅さんシリーズや『幸福の黄色いハンカチ』など日本映画の名作を手がけてきた山田監督は、僕にとって憧れ以上の存在。引き受けないわけにはいきませんでした。ですが、書いていただいた脚本に、僕自身がちょっと腑に落ちない点があり、自分で勝手に手を入れてみたんです。それで、製作発表の日に山田監督にその脚本を見せたら、大目玉を食らいましてね。いやあ、参りました」とクランクイン前の苦労を素直に吐露。山田監督が「直して良くなった部分もある」と認めてくれたこともあり、なんとかクランクインに漕ぎ着けた佐々部監督だが、「撮影中も、脚本に書いてあるシーンとは別の自分流に撮りたいシーンがいくつか出てきてね(笑)。結局、自分が欲しいシーンはほとんど撮っていましたね」と振り返り、佐々部監督としては初めてとなる他人の脚本で映画を撮ることの難しさを語っていた。
また、今回映画初出演にして、初主演の大役を全うした歌舞伎俳優市川海老蔵については「(歌舞伎をやっている)普段の演技よりは大分抑えて演じてもらいました。歌舞伎とは違って、見栄を切らない演技なので、彼自身にも“これでいいのか?”というフラストレーションもあったようで、ワンシーンだけ見栄を切るシーンを作って、そこで思いっきり(彼にとっての)普段の演技をしてもらいました。今回、彼と色々話をしましたが“映画は監督のモノ”ということを理解してくれていましたね」と海老蔵の懐の深さに感心していた。
次回作でも再び戦争を題材にした作品に挑戦するという佐々部監督は、「主人公の生き様を通して“戦争は絶対に繰り返してはいけない”ということがしっかり伝わっていれば」と締めくくった。「出口のない海」は9月16日全国ロードショー。