ゴダールが36年ぶりの来日。日本映画を語る
2002年10月29日 12:00

「勝手にしやがれ」などで知られるヌーベルバーグの鬼才、ジャン=リュック・ゴダールが36年ぶりに来日。「第14回高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・財団法人日本美術協会)で演劇・映画部門を受賞したゴダールは、23日に行われた同賞の授賞式に出席し、日本で初めてとなる記者会見を行った。
今年、72歳を迎えるゴダール。「なぜ映画を撮り続けているのか?」との質問に、笑い声をあげたあと「語ることができないから」とコメント。日本映画についてどう思うか? という問いには、「日本には、溝口健二、黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男といった優れた映画作家がいた。大島渚の『青春残酷物語』が真のヌーベルバーグだと思う。私やトリュフォーよりも前に、オオシマは既存の映画とは全く違う映画を撮っていた。また、北野武も素晴らしい。私は『HANA-BI』を気に入っているが、日本映画だからではなく、出演者が日本人だということを忘れるほど普遍的な映画だからだ。だが、“日本映画”というものは存在しない。ここでいう日本映画とは、日本人という民族の顔が見える映画のこと。映画とは、ある民族が自分自身の姿を見極めようとする手段だと思う。国民全体の顔が分かるような映画は、現代には存在していない。映画は難しい時期にきている」と語った。
ハリウッド映画については、「ハリウッド映画の世界支配はミステリー。アメリカには、もはや本当の映画プロデューサーはいない。いるのはエージェントと弁護士だけだ」。「アメリカはイスラム原理主義と対立を深めているのに、昔からハリウッドのことを映画の“メッカ”と言うのはなぜだ?」と皮肉も飛び出した。
現在準備中の新作は「わたしたちの歌」と題した3部作。「語ること」の苦手な監督の映画への意欲はまだまだ健在のようだ。
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