「タイトルが持つ意味を考えている…」悪は存在しない atsushiさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルが持つ意味を考えている…
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観賞後ずっと、タイトルに込められた、濱口監督の真意を図りかねている。
自然そのものに悪は存在しないということか、社会で対立する人間のなかにも悪など存在しないということか。
山でしか生きられない生物にとって、人間は単なる「侵略者」でしかない。
昔から住んでいようが、新たに「仲間」に加わろうとするものであろうが、彼らからみれば同じ「エイリアン」に過ぎない。住民の環境云々はただの言い訳にすぎず、すでに「完成」されたコミュニティに加わろうとする新参者を排除する構図があるのみ。劇中のグランピング建設の説明会は、さながらケアサービスの施設建設に反対する近隣のマンション住民の構図と同じ。
海辺で生まれ育ち、山を多少なりともかじった身としては、山は恐ろしい存在だ。陽が沈み漆黒の闇に包まれた山中に取り残される恐怖は体験したものでないとわからない。
山に優しかろうが、汚す存在であろうが、関係なく、時として無慈悲に自然は牙をむく。悪い行いをしようが、善行を積もうが、自然の行為そのものに意味はなく、因果論の入る余地もない。
人々の対話を作品の中に重きをおいているところは、濱口監督らしい世界観。
たとえ解決に至らずとも、コスパ・タイパなどの効率世界の対局にあろうとも、人間が対話を重ねることの意味を考える。
最後の場面をどう理解したらいいのか。そもそも理解しようとすることが人間の傲慢さなのかもしれない。
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