劇場公開日 2024年4月12日

  • 予告編を見る

「プリンセスが描くメンフィス版「美女と野獣」」プリシラ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5プリンセスが描くメンフィス版「美女と野獣」

2024年4月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

本当にアメリカ人はプリンセスが好きである。キャサリン妃や愛子様といった実在の人物に対してもそうだがディズニー映画のヒロイン達を愛している。
そう、この映画は「美女と野獣」にそっくりなのである。人智を超えた強大な魔力を持つ野獣=王と結ばれることで村娘のベルはプリンセスの立場を得るのだが、これは帝王エルヴィスと結ばれるプリシラと同じ。結婚に至るまで紆余曲折があるところもよく似ている。14歳での出会いから8年の歳月を経て二人は結婚しプリシラはエルヴィス王朝のプリンセスとなる。
ただこの映画ではエルヴィスと別れるところまで描いており「美女と野獣」とは異なる。通常、プリンセスの力は夫の庇護のもと夫の強大な影響力で裏付けられる。夫が地位を失ったり、死んだりすれば力を喪う。でも籠の鳥であることを嘆くプリンセスは多くいるが自ら地位を投げ出してしまうプリンセスはそう多くはないはずだ。
この映画が後半部分で急速に魅力度が下がるのはそのあたりの説得性がないところにある。ナンシー・シナトラやアン・マーガレットに嫉妬するプリシラは出てくるが、女優として自立することを決意する場面はなく彼女独自のスター性に触れている文脈もない。そのあたりが曖昧な印象は避けられない。映画で触れられていない後日談を語ればプリシラは女優になる。いくつかの主演作もある。でもパッとはしない。それでもプリシラばかりではなく娘のリサ・マリー、更にその娘のライリー・キーオとプリンセスの系譜が続く。彼女たちのスター性が高かったというよりはエルヴィスのカリスマ性がそれほど高く続いているということなのだろうけど。でもアメリカにはプリンセスの需要があるという説明が一番しっくりする。

やはり、この映画の素晴らしいところは前半30分くらいまでの西ドイツの出会いからエルヴィスが兵役を終え帰国するまでの部分だろう。
プリシラは初々しくエルヴィスもまだ新進スターの位置づけである(出会ってすぐエルヴィスがプリシラに人気のある歌手の名前を挙げさせる。彼女が第一に挙げたのはエルヴィスではなくボビー・ダーリンだった)若い二人の恋が瑞瑞しくガーリーに描かれる(スクリーントーンがピンク色である。初めて観た)
ソフィア・コッポラは自分自身がコッポラ帝国のプリンセスだった。だからこの作品はプリンセスがプリンセスを描いたものといえるのかもしれない。
最後に一つ、ラストに「I will always love you」か流れる(ホイットニー・ヒューストンの歌唱ではない)アメリカ人にとってはホイットニーも永遠のプリンセスである。
やはりこの作品はプリンセスの姿を追う「美女と野獣」に他ならない。

あんちゃん
talismanさんのコメント
2024年4月24日

あんちゃん、「リオ・ブラボー」にコメントありがとうございます。コロラドも決して忘れていません。書き足しました!

talisman
あんちゃんさんのコメント
2024年4月14日

追記
「I will always love you」だけど映画で使われていたのはドリー・パートンのオリジナルだった。1974年のヒットチューンなので時代としてはしっくりしている。ホイットニー・ヒューストンはあまり関係なかったみたい。

あんちゃん