「メッセンジャー」ボブ・マーリー ONE LOVE breezeさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセンジャー
歴史的なONE LOVE コンサートのハイライトシーンの再現が最後に来なかったのは確かに物足りなさを感じた。でも作品中に登場する沢山の歌詞やボブの言葉は勿論、リタにナイヤビンギを主催する長老ラスタなど、彼等の発する言葉のフレーズ一つ一つが混迷を極める現代社会に刺さるパンチラインとして強烈なインパクトを放っている。「圧政者に災いを」というボブの呪詛対象には今現在の国際社会にも当て嵌まる人物が複数存在する事を思い当たる人は少なく無い筈。「WAR」の歌詞は改めて現実的で衝撃的であり、当時から現代にかけて不変な状況を突きつけて来るので余計切実に響いた。
ハイライトは「シマーダウン」や「ナチュラルミスティック」のスタジオシーンで何度観ても鳥肌。でも一番印象的なのは、キリストの再来であり王の中の王、ラスタファリズムの神人と崇められたハイレ セラシエ皇帝と、ボブの実父が重なった馬に乗って現れたイメージの存在に「ユーアー マイ サン」と言われ、ボブマーリーの魂が帰りたかっただろう場所に連れられて帰って行くシーン。ジギーマーリーさんはお父様の御霊を供養される意味合いも込めてこの映画に携わったのだろうかと察する。最後のONE LOVEコンサート以降を実際のアーカイブ映像と肉声で演出したのも心からのリスペクトだと思う。
それにしても映画館という最高のサウンドシステムで浴びるルールロックレゲエは素晴らしい音響体験だった。ライヴ再現も鳥肌で、バレット兄弟の重戦車の様なリズム隊やJMの鋭いギター、そして動くアイスリーズのカッコ良さと言ったらもう言葉が出て来ない。
一部の人生を再現した映画だけど、これは混乱を極めつつある現代社会に問いかけるメッセージでもあると受け止めた。ネスタはメッセンジャーだと劇中にも出てきた通り、まるでボブ マーリーの魂が現世の多くの人々を手足の如く使い、ラスタファリズムを通したヒューマニズムやバビロンシステムに抗う人生哲学や価値観を伝えに来た様だ。2024年の今、ラスタ思想と平和を訴える姿を観て君達はどの様に思いどう感じる?と改めて問いかけられた感覚を覚え大変心を動かされた。鑑賞後はルーツロックレゲエも今までよりもより切実に強く響く。
ジャー ラスタ ファーアイ!