落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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真実は結局なんなのか
正直想像していた内容とは違った。
結局真実がなんなのか明らかになっていないような感覚になり、急に出てくる新たな証言に翻弄され、確信に近いことなのかよくわからない事柄を議論しまくっている印象だった。
痛ましいケンカシーンや白熱した裁判の議論が見せ場だったとしたら少し期待外れであった。
息子の揺れる表情が切ない
フランスの裁判風景が楽しめる本格サスペンス
本格的なサスペンスを久しぶりに見ましたが、しっかりとした論理展開で飽きが来ず楽しめました。
ただ、ずっと考え続けることになるので、仕事上がりに見るにはかなり疲れる映画でした。
映画としてはまず、アルプス近くの雪山の山荘の風景が美しかったです。こんないいところ私も住んでみたい…。英語とフランス語が切り替わるので最初カナダかな、と思っていましたが、フランスと知ってからはああ、アルプスなんだ、と納得しました。
そう意識するとワインを飲んだり、雪道を散歩したり、最後の犬が寄り添ってくれたり、出てくるシーンがどれもオシャレに感じられます。
向こうだと英語が共通言語なんですね。主人公の1人であるサンドラはドイツ人ですが、弁護士が英語も良いけどなるべくフランス語で話して、と忠告していましたが、英語でなくドイツ語だったらもっと激しい非難が来るだろうなと感じました。
古い話ですが、昔旅行した際にはドイツのカフェにフランス語のメニューがなく、フランスのカフェにドイツ語のメニューがなく、どちらにも英語とトルコ語が書いてあって失笑した記憶があります。
落下の解剖学、というタイトル通り、夫サミュエルの落下から事件が始まるのですが、これは夫婦関係の悪化、人気作家としての失墜、サンドラの人間性の見え方など、色々な意味にとれますね。
映画のもう一つの核心である裁判について、事件そのものとは別に掘り下げられる背景が興味深かったです。自殺か他殺かという点が焦点となっていますが、物的証拠が無いため検察側も弁護側も印象操作で争う形となっています。
録音やサンドラの普段の様子からするとどうしても悪く見えてしまい、さらに夫を自殺へと追い込んでしまった様に感じるように見せています。しかし、それは事件そのものとは関係がないということを弁護側が必死に押し返すところが本当に面白かったです。
裁判自体ではありませんが、フランスの裁判所の風景も楽しめました。
検察と弁護士がそれぞれ赤い服と黒い服の伝統衣装で着飾るのがまず面白いですね。伝統的な部分を残しつつ、傍聴人含めて翻訳が入ったり、息子のダニエル君に裁判の内容がショックになるが、傍聴しない方がいいと裁判官が勧めるシーンなど、人権先進国だなというのが見て取れて感心しました。傍聴席もヨーロピアンからアジアン、アフリカンなど人種が入り乱れており、実際のフランスっぽさがありました。
また、検察側が情動に訴えかけているのがフランス的ですね。人間に情動があって当たり前、という雰囲気もまた面白かったです。
この映画で最も面白いのは主役がサンドラでも弁護人のヴァンサンでもなく、息子のダニエル君だというところです。
母親と弁護人中心に進んでいきますが、最後に息子が証言するシーンで裁判も物語も終結に向かう、というところが物語の構造上、本当に面白かったです。
ダニエル君のシーンがたびたび出てきて印象付けているなと思いましたが、息子と父親との絆が逆に息子へ残酷な真実を伝えることになったというところが、悲劇的でしんみりしました。
ダニエル君は裁判官が傍聴の取り下げを勧めるシーンでも「ネットやテレビで知ることになるから同じだ」と応えており、もともとかなりしっかりした子でした。
しかし、保護人のベルジェの発言を自分のものにしたり、ある出来事の検証をしたり、最後に自分の考えと自分の意見を述べるにあたって、映画の最後に向かうにつれて成長したように感じられました。
やはり本当の主役はダニエル君なのでは?と思ってしまいます。
少し長めですが、とてもいい映画でした。
鑑賞動機:あらすじ5割、カンヌ5割
殺ったのか、殺ってないのか、明言はされてないということですよね。提示されていることからは、どちらともとれるのと、過去の映像は実際にあったことではなくては、主張していること/想像できることを映像化した、だけなのはすぐわかるけど。
余白が多いというか、複数の解釈ができる行間を補いながら観る感じが強い。夫婦間のむき出しの愛憎を見せられるのは、やっぱり疲れる。
淡々としてますが、中身はかなり深い。
フランスの雪山の山荘で、暮らす家族夫サミエル、妻サンドラ、息子ダニエル、愛犬スヌープ。小説家のサンドラは学生からのインタビューを受けている。ところが、突然サミエルがインタビューの邪魔をするかのように、大音量で音楽を流します。インタビューは中止となります。ダニエルが愛犬スヌープを連れて散歩にでます。家に戻るとサミエルが3階から落下して死亡しているところを発見します。事故、事件、もしくは自殺なのか。第一発見者のダニエルは視覚障害というハンディを背負っています。解剖の結果、致命傷は頭を打ったこととなり、生前に腕に怪我をしていることがわかります。妻サンドラが容疑者となり裁判へ展開されていきます。夫婦関係、妻サンドラの素行が裁判で明らかとなります。この展開で妻サンドラは責めるべきなのか同情すべきなのか鑑賞者は困惑すると思います。演技もさることながら、従来の夫婦間のイザコザが逆転しているからです。子育てに協力せず、仕事に没頭して浮気もしている。従来であればそれは男性の設定です。しかし、本作は女性となっているからです。家族を顧みない、浮気する夫が死亡して、その妻が容疑者となっていたら同情という展開となりお涙頂戴の作品となります。これを逆転したことで、鑑賞者は何が真相なのか迷い込んでしまいます。事実の積み上げがされる中、真実をどこに見出すか。これもこの映画のテーマのような気もしました。リアリティがあり過ぎで好みの別れる作品と思います。
家族の絆と裂け目「落下の解剖学」に見る社会の断面と深淵
『落下の解剖学』はただのヒューマンサスペンスに留まらない、深遠なメッセージを秘めた作品です。人体の構造を探求する解剖学のように、この映画は、雪山の山荘で起きた謎の転落死を通じて、家族の秘密や社会の問題を解き明かします。監督ジュスティーヌ・トリエの手によって、第76回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞し、さらに第96回アカデミー賞で5部門にノミネートされるなど、世界中から高い評価を受けている事の意味を深く感じました。すごい
この映画は、視覚障がいを持つ少年とその家族を中心に展開し、夫婦間の複雑な関係、社会問題、そして人生の不条理について深く掘り下げます。高額な医療費、外国で暮らすことの難しさ、性的マイノリティ、ネット社会による情報の拡散や誹謗中傷など、現代社会が直面する様々な問題を、一つの家族の物語を通して浮かび上がらせます。
サンドラ・ヒュラーが演じる主人公サンドラの迫真の演技は必見。彼女の演技を通して、観客は家族の愛、秘密、そして嘘が複雑に絡み合いながらも、それぞれの真実が明らかになっていくのかを目の当たりに。深い作品でした。
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スヌープ
カンヌで高評価を得てアカデミー賞に殴り込んで来た期待の作品、朝イチ目をこすりながら観に行きましたがかなり混んでて前目の席での鑑賞に。でもミニシアターは前でも観やすいのが良いなと改めて思った次第です。
ミステリーがメインなのかなと思っていましたが、基本は法廷劇がメインで、そこに家族の物語が加えられているという構成で、思っていたのとは違いましたがすぐに頭を切り替えて観れましたが、それでも会話劇メインで進展があまり無いのは退屈だなと思ってしまいました。
突然自殺してしまった父親を見つけた息子と母親、母親に殺人の容疑がかけられ、裁判に向かう…といった感じの作品です。
法廷劇は思っていたよりも弁護・検事共に自由に動き回っていたので、フランスだとこういう感じなのかなと思いましたが、なんだか高度なレスバトルだなぁとSNS社会に生きる人間な感想がポロッと出てきました。
主題には添いつつも、お前は同性愛だーとか小説はこういう暗示をしているんだーとか結構めちゃくちゃ言い合ってて、でもそれが下品には見えなかったので、頭の良い人たちは言葉の選び方も上手いんやろなーと思いました(小並感)。
観客の視点は完全に傍聴員みたいな感じで、現場で一緒に裁判を聞いてるみたいな感覚になる体験型になっていたのはちょっと面白かったです。カメラワークがぎゅっと一人の人物に寄るのとかまさにそれだなと思いました。
父親の視点の方に寄って観ていたので、どうしても奥さんの行動にも身勝手なところがあるし、被害者ヅラしすぎじゃないか?とかなり疑いながら観ていました。
奥さん全く自分に非がないとアピールしているのもかなり嫌で、なんとかして奥さん有罪になってくれと思ってしまうくらいにはUSBの音声で印象がガラッと変わってしまいました。
それもあって裁判の決着は奥さんの勝利という形になってしまったのもなんだかなぁとモヤモヤしてしまいました。
息子がかなり怖い行動をしているのが一番印象に残っており、父親が苦しんでる理由は薬なんじゃと思ってワンコに飲ませるシーンはゾゾっとしました。子供ながらの探究心が故にやってしまった事とはいえ、実際に死ぬ間際までワンコがなっていたのを見ると、この子も判断力に相当問題があるのでは…と育てる環境で考えも色々変わるんだなと思いました。
今作の中で手放しに褒めちぎりたいのはスヌープを演じたワンコで、表情が豊かで苦しそうにしてるところなんかリアルすぎて胸が痛みました。今まで観てきた俳優ワンコの中でもピカイチのワンコでした。この子に助演賞をあげてやってください。
ワンコ以外はよくあるフランス映画に法廷劇を加えた感じなので、すごい映画なんだろうなとは思いつつ自分には合わなかったなぁという感じの作品でした。俳優陣がアカデミー賞を取るのは理解できるんですが、作品がそういう賞を取れるポテンシャルがあるかどうか…これはアカデミーの審査員たちに委ねるしかありません。
鑑賞日 2/29
鑑賞時間 9:35〜12:15
座席 B-2
味わい深い映画‼️
フランス法廷劇
予告だけ観て鑑賞、意図せずして良い法廷映画を引いた。
作中の「重要なのは事実ではなく、君が周りからどう見られるかだ」というような台詞、まさに参審制や陪審制の曖昧さを表現しているのかな。
後半に出てくる口論シーン、
あ、なんか旦那さん可哀想かも、いややっぱり奥さんが可哀想かも、いやでも、やっぱり……客観的に見ているつもりの自分の判断がいかに曖昧で主観的なものかを突きつけられる感じ、本当に嫌になる、上手い。
他の弁論シーンも同様、家族のストーリーを一部見せられている我々には検察官がめちゃくちゃ嫌な奴に見えるんだけど、傍聴席から聞いてみればむしろ馬鹿げた弁論を繰り広げているのは被告人側なのかも、客観性ってなんなのか…。
元々フランス映画の独特なテンポに苦手意識があったのだけれど、この作品を観て私が苦手なのはフランス語のテンポなのかもと思い直しました。
子供には
裁判の現場は辛いですよね。しかも、自分の親同士が原告と被告だと、何も良い面は無いですからね。でも、最後に自分の意思を自分の言葉で発言したのは偉いですね。大人でも中々できないでしょう。
アカデミー賞ノミネートがこれ…
宣伝ミス
恩と仇は紙一重
タイトルなし(ネタバレ)
2時間半緊張感が絶えない優れた法廷劇。母は父を殺したのか、それとも父は自殺したのか…「誰を信じるか」というよりは、「どちらの現実を受け入れるか」という選択の問題であるように思える。それは被告とされたヒロインの息子だけでなく、裁判自体にも、そして最後まで「真相」が明示されることないこの映画を見る我々にも当てはまる。犬の使い方がとても上手い…というか犬の演技が上手い。主演犬優賞があれば与えてあげたいほど。
法廷ものにありがちなラストではない
ケンカって双方の言い分を聞かないとどちらが悪いなんて判断できない。そもそもどちらかが一方的に悪いってこともあまりないように思える。しかも男女間の諍いなんていろんな事情や思いや今までの積み重ねが絡まった上で起こるんだから判断が難しい。
夫殺しの容疑で逮捕された妻の裁判を中心に描かれるこの映画。物的証拠と言えるのは遺体と血痕のみ。その科学的な分析は前半の方で議論されるが、あとは夫婦仲が悪かった、妻が夫を憎んでいたんだろうという印象や推測の話が法廷で飛び交うものだった。フランスの警察や検察はあれで大丈夫なんだろうか。クソほどに意地が悪いし、ついでに頭も悪かった。
最後の方でアッと驚く展開があるのかと思ったが、意外とあっさり終わっていった。ここらへんがフランス映画っぽい。ハリウッドならもう一波乱起こしていたはず。ただ、最後に犬のスヌープ(ラッパーからつけた名前?)の行動は何かを暗示しているような気がしてしまう。あんな仕草したのを初めて見せられたから。
でも、夫が亡くなった真相がどうなのかってことはメインに伝えたいものではないのだろう。あの法廷で責められるサンドラと、夫との諍いや周りの証言で家族の関係性が変容する様がメインのような気がした。男女間の諍いって本当に面倒だと感じる。上映時間が長いのにそれほど退屈にはならなかった(前半は少し退屈)。なかなかの秀作だと思う。
サスペンスではない
犯人は誰か?を追求するサスペンスではなく、あくまでヒューマンドラマでした。
夫殺しの嫌疑をかけられた妻の裁判が進むにつれて、破綻していた夫婦関係がじわじわと明るみに。
どちらが善か悪か、ではなく、夫も妻もそれぞれ言い分があるよね、というのがリアルでした。
グレーな人間模様をぐじぐじ掘り返していくこの感じ、是枝裕和監督の作風に通じるものがあり。
いかにも、カンヌが好みそう。
(わたしも好き)
主人公は訛りのある英語と仏語を話しますが、後半その設定の理由がわかり、なるほどと思いました。
こういう設定はヨーロッパ映画ならではで、面白い。
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