「人の肝はそれぞれだ。 油断なくお試しを。」ヴァチカンのエクソシスト humさんの映画レビュー(感想・評価)
人の肝はそれぞれだ。 油断なくお試しを。
頑丈な石の壁でぐるりと囲まれたバチカン市国。
保守的な神々しさのあるカトリックの総本山。
実在する悪霊払い=エクソシスト。
原案はトップとして君臨したある神父の回顧録。
もうこれだけで、遠くの蝋燭が消えかかりそうにゆれる闇の中、息をひそめて謎に包まれた黒いベールの奥にあるなにかをひとりで覗くような怖々とした匂いが漂っている。
沸騰の夏と言われるこの酷暑、背筋を冷やす作品を一本でも…と思ってでかけたら、どちらかというと手に力が入り熱くなる闘い…
いや悪霊との闘いがエクソシストの仕事なのだが…。
それにしても、命がけで悪霊と対峙するエクソシスト=ラッセル・クロウ演じるアモルト神父のたくましさ!
彼が醸し出す貫禄は天下一品だなぁとつくづく。
ローマ教皇からの指名を受け乗りこんだスペインの〝現場〟はいかにも不気味な修道院で、四方八方なにがあっても不思議じゃない空気感。
私がエクソシストなら(?)高い代金が支払われようがお断りしたい案件。
(もはやエクソシスト失格⤵︎)
しかし、さすがはラッセル・クロウ、全く怯まず。
ちょっと大丈夫かなー?って感じもした彼とバディを組み任務遂行のため猛烈に挑む。
演出にかける技術やセンスもさることながら、やっぱりヨーロッパの古い建築物の重厚さや背負っている長い歴史が、闇夜に滲む街灯の色を重ねとてつもなく深い旨みを奏でスクリーンの迫力を増す。
そこに、時々挟まれる牧師たちとのユーモラスな会話や彼のチャーミングすぎるスクーター移動のうしろ姿。
あのフライヤーの超のつく威厳とはちがう魅力よ。
驚きや怖さは、枠からものすごくはみ出すことはなく、ある意味リラックス?して臨めるホラーかな。
…いや、人の肝はそれぞれだ。
油断なくお試しを。