「【"耐えられない悲しみに対し、人は如何に対峙するのか。"愛娘が失踪した母を演じた石原さとみさんの渾身の演技に涙する作品。被害者への誹謗中傷や、視聴率至上主義のメディアの在り方を描いた逸品でもある。】」ミッシング NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"耐えられない悲しみに対し、人は如何に対峙するのか。"愛娘が失踪した母を演じた石原さとみさんの渾身の演技に涙する作品。被害者への誹謗中傷や、視聴率至上主義のメディアの在り方を描いた逸品でもある。】
◼️自宅から僅か300mの公園の間で幼き愛娘の美羽が失踪する。母の沙織里(石原さとみ)は、時が経つに連れ世間の関心が薄らいで行く事に苛立ち、夫の豊(青木崇高)に対しても、当たる日々。救いは取材を続けるローカルテレビ局の記者砂田(中村倫也)だった。
◆感想
・今作は観ていて心理的に辛いが、𠮷田恵輔監督からの、現代SNS社会の闇や、メディアの在り方を問うメッセージが伝わって来る。
故に、砂田が、同僚が政治家のスクープを上げ、全国区のキー局に移る姿や、上司からの”激励”によりやらせに近い取材を沙織里をお願いするシーンは砂田の辛い気持ちが伝わって来る。この役を演じた中村倫也さんの新境地ではないかとも思ったな。
・沙織里の弟、圭吾(森優作)が、最後に美羽の側にいた事や、沙織里がアイドルのライブに行っていた事から、SNSで誹謗中傷の的となるシーンは、暗澹たる気持ちになる。
又、警察を名乗って沙織里の携帯に美羽が見つかったという偽電話がかかってきたり、ラインで見かけたという連絡が入るが、全て嘘だと分かるシーンも二人が振り回される姿が辛い。
- 大変失礼ながら、森優作さんの吉田戦車の”カワウソ君”に似た風貌が、学生時代に苛められていた事や、彼が美羽の失踪に関係しているのでは、と言う噂が起こった信憑性を高めている。
だが、後半圭吾が、彼なりに償いをしている事が分かったシーンや、精神的に追い込まれ、彼に罵詈雑言のラインを送った沙織里と圭吾が彼の軽自動車内で泣くシーンは沁みたのである。-
・沙織里が美羽が壁に落書きした所に光が当たり、色ガラスを通した事で、虹のように見える太陽光に彼女が手を差し出しながら”あんなに怒らなければ良かったな。”と言うシーンも印象的だったな。
■2年が過ぎ、沙織里が住む市で同じような幼き女の子の失踪事件が起きるのだが、沙織里と豊は金がない中、その女の子のチラシを作り配り始める。チラシの隅に美羽の写真が入ったチラシである。
そして、女の子が見つかったという報に喜ぶ二人。ナカナカ出来る事ではないよな。
個人的に一番涙が出そうになったのは、女の子の母親がチラシ配りをしている二人の所に来て”お二人のお陰です。何か手伝わせて貰えませんか?”と言葉を掛けて来た時に、夫の豊が落涙するシーンである。彼はそれまで涙を見せず、常に冷静に、沙織里を支え、職場では義援金を貰い、チラシを配って来た。その彼が落涙したのである。私が男だからかもしれないが、あの一瞬の青木崇高さん演じる豊の嗚咽する姿が沁みたのである。
<今作は、石原さとみさんの渾身の演技に涙する作品であり、被害者への誹謗中傷や、視聴率至上主義のメディアの在り方を描いた社会性も盛り込んだ逸品でもある。>
中村倫也の役ですが、
自分は信念で真実を伝えようとしてるのに、対象者の不都合な所はカットするという矛盾をして、後輩の出世や上司の圧力に苛まれながら、刑事に突きつけられた一言に刺されるという、難役ですがとても良かったですね。
こんばんは。
豊の落涙は沁みましたね。
優しさに触れたこと、僅かながら確実な協力を得たこと、沙織里の行動が少しだけ報われたこと…
涙の理由にも複雑なものを感じました。
こんにちは。森優作さん、「野火」以来でしたが俳優オーラのなさが逆にいいオーラを放っていて本作の役どころは絶妙でしたね。そのリアルな存在感、演出家はけして彼を手放さないでしょう。お気に入りのおもちゃを手にいれた子供のように(笑)