「【2024年の現在でも、世界の何処かで起こっているだろう恐怖を描いた作品。非常に不快だが、一気に没入させられるノンストップポリティカルホラー。救いは監督が有色人種の女性であるという事である。】」ソフト/クワイエット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【2024年の現在でも、世界の何処かで起こっているだろう恐怖を描いた作品。非常に不快だが、一気に没入させられるノンストップポリティカルホラー。救いは監督が有色人種の女性であるという事である。】
■幼稚園に勤めるエミリーとレスリー(オリヴィア・ルッカルディ)、マージョリー、キム
、アン、リリーの5人の女性たちは他愛無い気持ちで、普段から抱えている有色人種に対する不満を持つ中、白人至上主義のグループを結成する。
多様性を重んじる風潮、有色人種や移民を毛嫌いする彼女達は、日頃の不満や過激な思想を共有して盛り上がる。
そして会場にした教会で、彼女達の会話を聞いた神父から”今すぐ出て行け。”と言われ、エミリーは仕方なく、皆を自宅に誘う。そして、彼女たちは立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹と口論を始めてしまう。
◆感想
・非常に不快な映画である。だが、現代の抱える闇にスポットライトを当てたという点では、意義のある作品である。
・私は、この作品は、監督自身が有色人種の女性であるので、逆説的な意味合いで製作されたのだろうと思う。と言うか、思いたい。
<怖いのは、この作品で描かれていたようなことが、今現在、世界の何処かで起きていてもおかしくないという事実である。
日本を含め、自国ファースト、保守的思想が世界に蔓延する中、この映画は一定の意味を持つのかも知れない。
そして、純粋に映画として見れば、その尋常でない緊迫感と、レスリーが嗾ける勢いに乗って負のサイクルに呑み込まれて行く愚かしき白人女性達の姿が実に怖く描かれている点が、出来としては秀逸なのかもしれない。
湖に放り込まれた有色人種の姉が息を吹き返すシーンは、その後の愚かしき行為をした白人女性6人の未来が閉ざされた事を示している。
あのシーンこそが、この映画の有色人種の女性監督、ベス・デ・アラウージョが激しい怒りを持って訴えたかったことなのだろう、と思う作品である。>