「侍はこわい」碁盤斬り きのこさんの映画レビュー(感想・評価)
侍はこわい
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一見すると、格之進は穏やかで優しくて正義感があり、皆に慕われている浪人ですが、その顔は無表情と言えば無表情で、何を考えてるのかいまいち分からない目をしているのに、激昂すると急に目に力が宿り、表情が別人のようになる。
草彅剛の演技が、めちゃくちゃ嵌っていて、良い映画でした。
映画タイトルの「碁盤斬り」。
囲碁がキーになる映画ですが、ボコボコの1個1個かたちの違う碁石を使っていて、それがとても印象的でした。
後で知ったのですが、これは落語が元になってるお話しらしいですが、歌舞伎の世話物っぽい雰囲気に撮ってるところも良かったです。
しかし、ちょっと軽く疑っただけで、あんなにキレられたら本当に嫌ですね 笑
激昂したり、柴田兵庫に仇討ちするあたりは、もはやなんか活き活きしてて、そこの対比が良かったです。
もしかしたら、格之進は、その部分でしか、本当は生きていると実感出来ていなかったのかもしれません。
でも、今まで穏やかな格之進しか見てない町人にとったら、もう全く理解できないし、たまったもんじゃ無いでしょうね。
タイトルに書いた「侍はこわい」は、司馬遼太郎の短編小説ですが、かなり昔に読んだ小説なのに、この映画を観てる時にこれを思い出しました。
この映画で出てくる町人たちも、豹変した格之進を見て、まるで違う人種を見るような感覚になって、思ったんじゃないでしょうか。
「侍はこわい……」と。
最後、碁盤を叩き斬ったのは、侍の狂気との決別なのか、娘のために己の矜持を斬ったのか、そこのところは何とでも取れる終わり方でしたが、そこも含めて良い映画でした。
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