アナログのレビュー・感想・評価
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壮大な悲恋
あのたけしさんの初の恋愛小説が原作と知って興味深く思い、鑑賞。
名監督でもあるたけしさん自ら映画化でなく、客観性も重視したのだろうか港岳彦さん、タカハタ秀太さんに託したところがたけしさんらしい。脚本の港さんは、「硫黄島からの手紙(2006)」の二宮さんの演技を見て一目惚れしていたそうで、本作も二宮さんで当て書きしたそうですが納得です、勿論、波瑠さんも素晴らしいのですが登場人物全てが名演技、素晴らしいキャスティングでした。中でも意外だったのはリリーフランキーさんの抑えた演技、こんな表情だけで存在感を示せる名優さんとは初めて知りました。
真のロマンティックは悲恋にありと名作「ラ・ラ・ランド(2016)」を観て思いましたが本作も、その流れでした。
前半は二人の週一デートの奥ゆかしい流れで、きっと結ばれて終わるハッピーエンドだろうに、こんな調子で2時間の恋愛ものとは、年端の行ったおじさんには正直しんどいし、回りくどいなと感じましたが途中から暗雲が立ち込め、思わぬ展開、後半の謎解き、伏線回収も見事でした。
悟の友人の高木から悟の母の死を知ったみゆきが落ち込んだ悟を夜の海に誘って抱きしめるシーン、タイトルのアナログを象徴するかのような浜辺の糸電話、陽のあたる浜辺でのラストシーンは悲恋の二人の前途に光を刺す兆しだったのでしょう、思わせぶりなハッピーエンド演出、たけしさんの原作に込めた繊細なセンスとひねりのつまった宝箱のような映画でした。
(脱線)
冒頭で波瑠の言っていた「フランスの競馬の入賞者に贈られるメダルプレートを使ったトイレットペーパーホルダー」が映されなかったので気になって調べてみたら神戸の輸入雑貨店HOMEWARDというお店でフランスアンティーク トイレットペーパーホルダーと言う名で売っていました。あとカフェPIANOのト音記号を模した窓扉の金具も広島のアジアンティーク ASIANTIQUEというお店で¥1,160円で売っていました。
人の心を動かす原動力の正体
ビートたけしさんの小説
なるほど~ そうでしたか~
そうであれば、感じたことをストレートにレビューさせていただきます。
この作品の特徴として、描かれてもいいシーンをあえて描かないことで、そこが伏線になっている。
後でそのシーンが明確化されることで視聴者にカタルシスが生まれる。
この種明かし部分の表現は良いと思う。
ただそこに一貫性はなく、視点も登場人物によって違うことで、種明かしがそのまま種明かしでしかないので、若干工夫してほしかった。
様々なモチーフもあるにはあるが、それだけ植え付けるかのような手法に新しさは感じない。
最後にそこに行きつくためのクリスマスをイメージさせるあからさまな描き方ではなく、いつものコーヒーが風に漂って彼女の脳を刺激する表現でいいと思った。
母の葬儀を知らないままの彼女
このあたりの描き方は様々なものを想像させていい感じだったが、山下くんの妻が「仕事で手に入れたCD」というのをあのシーンだけで表現したのは是非が残るように思った。
最後の悪友とのPianoでのシーンで、「指輪はどうしたの?」というセリフは、「まだ希望は、私の想いは生きている」ことを示したのだろう。
最後まで敢えて言わない、説明しなかったのは良かったと思う。
さて、
「彼」はなぜこんな小説を書いたのだろうか?
彼にとって主人公は彼の分身だ。
水島とは真逆に生きてきた彼だからこそ、そのコントラストから純愛というもののあり方をこのように解釈したのだろう。
脳障害と意思疎通困難は、恋愛中の男女にとって致命的なことだ。
一般的にはこの絶望的状況こそ、恋愛という感情が最も燃え上がるものとなる。
しかし意思疎通まで難しい場合、物語を動かす原動力は水島以外にはいないことになる。
周囲は応援できるが、途切れることのない水島の思いは絶対不可決になる。
つまり、この時点でもう選択肢がないのだ。
ただ、
実際どれだけの人が水島のようにふるまうことができるだろう?
この問いは視聴者の心に残るだろう。
彼女の状況を知った直後から、ここだけが焦点にならざるを得ない。
物語は、奇跡はどのあたりまで起きるのかということになる。
またはそんなありきたりの質問を超えてくる大どんでん返しへの期待。
その水島の母が言い残した「人には自分だけの幸せがある。それを信じて貫きな」という言葉が、彼の内に秘めた決心だったのだろう。
水島の一貫した誠実さにブレがないのは良かったが、彼女の正体の後の物語の先はすでに見えてしまっている。
しかし、
おそらくこれこそが彼が最もそうだと解釈している「純愛」の形なのだろう。
それには誰も、何も異論などない。
この作品のタイトルにもなっている「アナログ」
このモチーフはうまくあしらわれている。
それは、人の見る目、人の思い、人の心であり、単に「心」なのかもしれない。
突き詰めればアナログの根底にある心こそが、人を動かせる唯一の原動力なのだろう。
冒頭 海と誰かのヴァイオリン演奏と無観客のホールのシーン
あれが現在、水島と出会った直後の彼女の心の中であり、そこには再び動き始めた音があることを示している
エピローグではソロで弾く女性の心と意識はたった一人の観客の水島へと捧げられている。
彼女が見ているのは水島一人だけだ。
彼女のドイツでの過去は、事故によって消え去ったのかもしれない。
そしておそらく「彼」の中にある母親像 つまり、彼女が助かったのは母の力だったのかもしれない。
死んでもなお続いている息子に対する無償の愛 水島と母との関係もまた、「彼」の抱いている純愛の形なのだろう。
彼女の名前 ミハルミユキ ナオミチューリング
最後に水島くんが彼女の名前を「ミユキさん」と呼ぶところに、彼の心の奥底に隠されたメッセージがあったように感じた。
「彼」の様な巨匠に講釈を垂れる人はいないのだろうが、ごめんなさい。感じたことをそのまま書いてしまいました。
時間とお金の無駄でした
静かな恋愛映画
糸電話の答
なんでタケシが?
感性が結びつけた二人
みゆきが携帯もスマホも持たなかったのは、不幸な出来ごとに遭ってしまい、そのことから「時間を止めたかった」(=外界からのダイレクトなアクセスを止めたかった)から、ということのようです。
外からの刺激を断ち切って、静かな内省を大切にしていたいという心情だったのでしょう。
とかく人間関係の複雑さから心を病んでしまう人も少なくない昨今、彼女のような生き様(ざま)も、それはそれで、ある意味「正解」とといえるのではないでしょうか。
否、むしろ、本作のみはるのように、自分の心に正直に生きることがもしできれば、本当に毎日の生活は素敵だろうなぁとも思います。評論子は。
そして、彼女の(その頑なな?)気持ちを融かしたのは、彼女と同じような感性を持ち合わせていた水島との出会いだったことも、疑いのないことと思います。
水島にしても、他の連絡手段を聞き出そうとしたり、彼女が携帯を持たない理由を糺(ただ)そうとしたりはしない―。それは、彼女を彼女のあるがままで受け入れるという、彼の素直な心根の表れでもあったのだろうと思います。
他方、当のみゆきの側でも、携帯を買って、止めていた時間を、また動かそうとしていた―。
まるで「同じ感性」という糸で結びつけられたような二人の心根の温かさが画面を通して伝わってくるような、充分な佳作であったとも思います(作中の糸電話が、その「糸」の示唆だったというのは、たぶん、評論子の考え過ぎでしょう。)。
(追記)
作品の本筋とは関係がないのですけれども。
持つべきものは友人だと、改めて思いました。
折に触れては水島を支え、励まし、慰め、そして決定的で残酷なものではあったものの、貴重な情報をもたらして水島を助けたのは、他ならない彼の友人の山下と高木でした。
「親しき仲にも礼儀あり」とは言うものの―。
気さくに、時には(ある意味)乱暴なことも言える関係性というものは、何にも替えがたいものだとも、改めて思いました。
別作品『素晴らしき哉!人生』の「友ある者は、人生の敗残者ではない」というのは、間違いなく、こういうことを言うものだとも、改めて思います。
(追記)
日時を約束して喫茶店で待ち合わせ…メールやSNS(デジタル)で連絡を取り合わないというまさに「アナログ」ですなぁ。
評論子もひと頃は、まだ学校にいるうちに「何時ころ」と約束をしておいて、彼女の家に電話すると、タイミングよく彼女が電話を取ってくれる…まさに「昭和アナログ」でございました。
二つ三つタップして、すぐ彼女(彼氏)と話ができるのは、考えてみれば、なんと味けのないことでしょうか。
たまにタイミング悪く家族が電話を取ってしまうこともありました。
お母さんが取ったときは「はいはい、娘ですね。少しお待ち下さいね。」と、何の問題も起こらないのですけれども。
これがお父さんが取ったりすると「ウチの娘に何の用だ。悪い虫でもついたか。」とでも言わん気なけんもほろろの対応だったりもします。
そういう苦難が、二人の愛を育てていたと考えるのは、評論子の単なる思い過ごしでしょうか。
(追記)
同じく女優さんと言っても、モデルのご出身だけあって、一つ一つの所作が美しかったですね。みゆき役の波瑠は。
評論子に言わせれば、女優さんと言えば、まずは、なんと言っても別作品『クレイマー、クレイマー』のジョアンナに恋をしてから、メリル・ストリープの一辺倒だったのですけれども。
また一人、素敵な女優さんを知ることができたとに思います。
これも、本作を観ての「収穫」の一つではあったと思います。
ベッタベタだけど
ベッタベタな恋愛映画かもしれない。出会いも、友人関係も、プラトニックな関係も、展開も、オチも。
でも、映画なんだから。ベタベタで良い感じで終わるで良いんだよね。奇跡ってあるよねで良いよね。
映画なんだから。
短絡的すぎる設定?
ピュアな愛を描いたとても日本的だなあと感じる素敵な作品ですね
この映画のように(愛は奇跡を起こす!)と信じたい
全体的に「控えめ」
だけど
突然みゆきが悟をハグしたり、落語を披露したり……
ん??あれれ?
仕事場での歩きスマホで、先輩が徹夜で仕上げた模型を壊すなんて、ちょっと無理矢理すぎるエピソードがひっかかったし、上司が堂々と部下の成果を横取りし、雑誌のインタビューを受けそれが雑誌に掲載されることが日常的にあり得るのだろうか
海辺での紙コップ電話も
竹串や、凧糸だとしても長すぎる紐も腑に落ちない
年齢を重ね、少しだけカッコよさに陰りが見え始めた二宮さん、でも演技はさすが、相変わらず上手い!!
実年齢とほぼ同じ役柄なのに、恋愛に対して純粋過ぎる気がするけどなぁ
キスシーンも濡れ場シーンもないなんて
それなのに、あそこまで愛せるのだろうかと疑問は残る
刹那さとユーモラス
好きな映画でした。
調べたら、監督と脚本家か好きな作品をとってました。
海辺で飲んでる珈琲が特別に美味しそうでした。
焼き鳥屋のくだりがとても楽しくて好き。
お姉さんの読んだら忘れて、この場面で号泣。
それと、大根振り回した話とかも良かったです。
嫌な人物が一切登場しなくてストレスフリーな作品でした。
指で演技
ラブストーリーのテーマとしてはありがちなテーマだけど、演出と音楽と俳優さんたちの素晴らしい演技で、素晴らしい映画になってます。
特に「この監督いいな」と思ったのが、最後の海辺のシーン。車椅子と波留の指が映ってて、「指が動きそう」と思ってたら案の定動きました。波留の指の演技、良かったです。
最後の終わらせ方もおしゃれでセンス良い。
ニノはやっぱ上手い。二人の友達の友情が素敵。上品な波留が美しい。
50のオッサンでも見てて恥ずかしくならないラブストーリーです。
今のひねくれた私が純粋なラブストーリーに耐えられるだろうか、とあま...
こんな恋愛もので…
泣くとは思はなかった。
にしても二ノ宮さんは本当に演技が上手いですね、何なんでしょうこの方は。波瑠さんも役柄に寄せていて違和感なく素敵な女性を演じてましたね。切ないストーリーだったけど、これからもしかしたら幸せになれそうなエンディングがまた良かったです。
いい映画ですので、是非ご鑑賞を!
波瑠の透明感
恋人が事故にあう話しのなんと多いこと。
主人公のニノが好きな人に会いたくてはしゃぐ演技、わかるわかると共感できました。
事故や病気なしの恋愛映画がみたかったので星3つに。
あの日から、毎日があなたと一緒の木曜日
携帯を持たない女性に恋した青年。
今の時代にアナログな、切なさとピュアな純愛が期待出来そうだが、原作小説がビートたけしなのが驚き!
毒舌な笑いや監督作ではヤクザやバイオレンスのイメージだが、『あの夏、いちばん静かな海。』『Dolls』など恋愛映画も撮っている。自身初の恋愛小説。
携帯などで気軽に連絡が取れ、出会いもデジタル化。そんな今、“直接会う”事を大切にする二人。
会いたい気持ちがあれば、必ず会える。
たけしが紡ぐアナログな恋の行方は…。
街中のお洒落な喫茶店で出会った二人。
悟とみゆき。
悟はインテリアデザイナー。みゆきは商社勤めらしいが、何処か謎めいている。
悟がみゆきが身に付けていたものを、みゆきが悟がデザインした店の内装を気に入ったのがきっかけ。
また、会えませんか…? 連絡先を…。
が、みゆきは携帯を持っていないという。
以来、毎週木曜日、この店で会う事を約束。
にしても、もどかしい!
時には来れない時も。
悟は仕事の出張で。入院中の母が亡くなった時。
みゆきも家族の都合で。
会う店は決めているんだから、馴染みのマスターに言付けを頼むとか出来るだろうに…。
アナログを通り越して不器用。
でも、そのもどかしさや不器用さが、かえって相手を思う優しさや温かさで包む。
きっと何かあったんだろう。会いたいけど、仕方ない。
相手を縛り付けたり、急かしたりしちゃいけない。
携帯やスマホを持っていたら、連絡取れるまで鬼電や執拗なLINE。そういうのって関係を悪くしがち。
今週ダメなら、また来週。
都合が悪い時以外は、ほぼ毎週会う。
会って、美味しい店で食事したり、クラシックコンサートに行ったり、海に行ったり。
デートもアナログ。
その雰囲気、関係性、好演も温かい。
インテリアデザイナーとしての才能やセンスはピカイチ。が、優しすぎて貧乏くじ引く事も。絵に描いたような好青年。
これが全て演技だったら天性の才! 二宮和也のナチュラルさ。
波瑠の魅力大爆発! その美しさ、品の良さ、可愛らしさ。
当初たけしは執筆の際、TVドラマで共演経験のあった竹内結子をイメージしたそうだが、竹内結子も合いそうだが、波瑠だって!
清潔感際立つ衣装の数々も。本当に今、こういう女優さん稀有になった。他には松下奈緒くらいか。
“悪友”がぴったりの桐谷と浜野のWケンタ。
口数少ないが、リリー・フランキーの佇まい。
内装や小物が本当にお洒落。映像や音楽も美しい。
二宮とWケンタのやり取りは3人の素のようでもあり、お笑い芸人たけしならでは。
本作がたけし自ら監督だったら、もっと個性があったろう。
タカハタ秀太の演出は、作品雰囲気に寄り添い、落ち着いたものになっている。
携帯を持っていなく、焼き鳥屋も初めて。
ちょっと浮世離れの生粋のお嬢様…?
“音楽”について詳しい。が、クラシックコンサートを途中退場。
何か陰や過去を秘めているみゆき。
実際、みゆきの事をほとんど知らない。みゆきも悟の事をほとんど知らない。
が、それでも構わない。一緒にいたい、一緒に生きていきたい。
悟は遂にプロポーズを決心するのだが…
その日はみゆきが予定あり。一週間後、話したい事があると約束。
しかしそれから、みゆきが店に現れる事は無く…。
プロポーズのプレッシャー感じてフラれたのか…?
だとしたら、自分が悪い。落ち込む悟。
仕事では重要ポストを任されて、大阪へ。
会えぬまま…。目に見えて落ち込む悟。
一年が過ぎ、悪友から報せが。
みゆきの素性。プロポーズしようとした日、何が起きたか…。
本名は奈緒美。世界的なヴァイオリニスト。
ドイツ人音楽家と結婚していて、死別。
コンサートを途中退場したのは、亡き夫を思い出すから。
音楽関係の過去は薄々察しが付いたが、結婚や死別までは予想出来なかった。実は突然のファンタジー的な秘密や病気などと予想していたので。
日本に戻ってから空虚な日々をただ送っていたある日、あの店で悟と出会う。
また人生に光や温もりが。
一週間に一度だけ、彼と過ごす日々が何より楽しい。幸せ。
みゆきの姉が見せてくれたみゆきの日記に、その全てが込められていた。
自分の一方的な思いだけじゃなかった。彼女の方も同じだった。
が、そんな時起きた悲劇…。
あの日、みゆきは交通事故に遭っていた。
命は助かったが…、事故の後遺症で意思の疎通が出来なくなり、下半身麻痺の車椅子。今は家族が介護しているという。
姉に頼んで、会わせて貰う。
やっと会えた。が、以前のように話したり、気持ちが触れ合ったりはもう…。
いや、それでも彼女は彼女だ。
悟はある決心をする…。
みゆきが携帯を持たぬ理由が今一つ分からず。素性を知られたくないからか、もう悲しいだけの人との関わりをしたくないからか。
悟の決心や周囲の配慮はかなりご都合主義。悪人の居ない皆善人のファンタジー世界。
いい話過ぎてちとリアリティーに欠けるかもしれないが、やはりラブストーリーはハッピーエンドで終わりたい。温かく、希望を感じさせるラブストーリーを久々に見た気がする。
みゆきを襲った事故は『Dolls』の残酷さを、美しい海辺の風景は『あの夏、いちばん静かな海。』を思い出させる。
たけし流ラブストーリー。実はロマンチスト。
意思の疎通が出来ないみゆきが、ラストシーンで必死に伝えようとした言葉。
そう。これから毎日が、あなたと一緒の木曜日。
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