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オリジナルは2016年にスペインで製作された「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」。リメイクはこれまでにイタリアの「インビジブル・ウィットネス 見えない目撃者」(2018)、インドでも2本の異なる言語版が作られていて、今回の韓国版で4本目となる。オリジナルとイタリア版を鑑賞したが、イタリア版は本家のわずか2年後に製作されたこともあってか、舞台をイタリアに移したほかは元の筋をラストのオチまでほぼ忠実に再現しただけの作り。一方、この「告白、あるいは完璧な弁護」は、元のオチに相当する場面からさらに大きな展開が追加されており、いずれかのバージョンを鑑賞済みの観客にもサプライズがあるはずだ。
【ここから軽くネタばらし】
この映画は作り手が仕込んだトリックを観客が筋を追いながら解いていくタイプ、小説で言うところのミステリ作品なので、なるべく事前情報を入れずに劇場に足を運んでいただきたいところ。なので、当レビューは鑑賞済みの方を想定しているし、もし未見の方でこれから観る可能性のある場合はできればいったん離れて鑑賞後に再訪していただけるとありがたい。
さて、本作はミステリの叙述トリックの一手法である「信頼できない語り手」を採用している。4度もリメイクされるほど各国のフィルムメーカーを刺激した理由の1つは、この信頼できない語り手を複数存在させることで謎を複雑化した点にあると思う。もっとも、このタイプの作品に馴染みがある人なら、IT社長ユ・ミンホが語る山中での自動車事故の回想を再現したシークエンスの中に、不倫相手キム・セヒの回想も詳細に映像化されて描かれるあたりで、この映画の叙述自体が「信頼できない」、つまり真実でないことを描いている可能性があることに気づくはずだ。
単純なリメイクだったイタリア版に比べると、本作は細かな改良がいくつか認められる。たとえば銀行口座と送金をめぐる偽装工作については、本家・イタリア版ともにかなり無理筋な手口で説得力に欠けていたが、韓国版の方がまだ現実味のある手口を描いている。
本家・イタリア版はある人物が明かす正体がラストのオチになっているのだが、韓国版はここから独自のシークエンス、もうひとつの波乱を用意している。ただし、ここはまあ確かに“予測不能な展開”かもしれないが、一般的な人間心理が軽視されているというか、こういう状況で人はこんな判断しないだろうと思わせる行動があったり、真相を求める側にとってあまりに都合よく事が運びすぎたりと、まずあり得そうにないことを連続して起こすことで意外性を高める意図が見え透いてしまう。それが良くも悪くも韓流らしさなのかもしれないが。