アダマン号に乗って

劇場公開日:

アダマン号に乗って

解説

「ぼくの好きな先生」「人生、ただいま修行中」などで知られるフランスのドキュメンタリー監督ニコラ・フィリベールが、パリのセーヌ川に浮かぶデイケアセンターの船「アダマン号」にカメラを向けたドキュメンタリー。

パリの中心地・セーヌ川に浮かぶ木造建築の船「アダマン号」は、精神疾患のある人々を迎え入れ、文化活動を通じて彼らの支えとなる時間と空間を提供し、社会と再びつながりを持てるようサポートしている、ユニークなデイケアセンターだ。そこでは自主性が重んじられ、絵画や音楽、詩などを通じて自らを表現することで患者たちは癒しを見いだしていく。そして、そこで働く看護師や職員らは、患者たちに寄り添い続ける。誰にとっても生き生きと魅力的なアダマン号という場所と、そこにやってくる人々の姿を、フィリベール監督によるカメラが優しいまなざしで見つめる。

2023年・第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、最高賞の金熊賞を受賞。2003年の「パリ・ルーヴル美術館の秘密」以降のフィリベール作品を日本で配給してきたロングライドが共同製作。

2023年製作/109分/G/フランス・日本合作
原題または英題:Sur l’Adamant
配給:ロングライド
劇場公開日:2023年4月28日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第73回 ベルリン国際映画祭(2023年)

出品

コンペティション部門 出品作品 ニコラ・フィリベール
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(C) TS Productions, France 3 Cinema, Longride – 2022

映画レビュー

5.0川の上の桃源郷のような

2023年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

二コラ・フィリベール監督は、普通とそうでないものとの境界線を緩やかに破壊するのが上手い。彼のカメラのたたずまいは何かを暴こうという前のめりな姿勢にならず、近づいて共感しようとしすぎず、そこに居合わせて観察し、観客の眼の代わりになる。観客は、そのコミュニティの住民の一人となったような気分にさせられる。
本作は、セーヌ川に浮かぶデイケアセンターの日々の暮らしを撮影した作品だ。精神疾患を持った人々がここを訪れ交流し、思い思いに日々を過ごしている。絵を描いたりコンサートをしたり映画を鑑賞したりという文化活動を通じて社会とのつながりを回復していくことを狙いにしている施設だ。
フィリベール監督には「すべての些細な事柄」で精神クリニックでの文化活動を撮影していたが、本作の手触りがあの作品に似ている。本作も「すべての些細な事柄」も、普通の人間とこうした施設にいる人々の垣根などほとんどない、人間はみなちょっと弱くておかしくて愛おしい存在だと描いて見せてくれる。この映画の穏やかな空気にいつまでも浸っていたくなる。

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杉本穂高

4.0さすが フランス!!

2024年2月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

幸せ

予備知識ゼロで観た。
先ずはアダマン号の窓がOPENするお洒落な建築に目を見張りワクワク。
ここに来ている1人1人が物凄い才能を持っていることに感嘆!
演奏(作曲)されたあの曲は歌詞もメロディーもス・テ・キ。絵ってこんな想いで描くものなんだ、こんな風に描くものなんだと教えられた気がする。日本の教育にはない発想。
そしてそれらの能力を発揮出来るシステムと、開花する場所があることに羨望の眼差しすら向けていた自分。
過酷な運命をサーフィンのように乗りこなし、必死で生きようとする彼等・彼女等。
それを支える人々。
美しすぎる。
生きるとは、生き甲斐とは、使命とは……。考えさせられる映画だった。

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映画イノッチ

3.5エンタメではなく、ドキュメンタリー。

2023年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

この前に、同じくドキュメンタリーの「燃えあがる女性記者」を観たのですが、こちらは大変ドラマティックな内容だった。

「アマダン号に乗って」は、それに比べると、ちょっと変わった日常をのぞき見するような映画だった。
私も、途中寝落ちました。

ただ、そこはさすがフランス映画。
エスプリのきいた会話を通して、表現すること、受け入れること、生きることを感じた。

ラスト近く、ワークショップの講師を希望する女性が、自分の想いを語るシーンが胸に迫った。
場を信じて、自分を伝える勇気、そんな彼女をきちんと受けとめるメンバーに乾杯♬

革新的なデイケアセンターだと感じ入った。
日本の福祉制度にかかわる方々にも、是非観て頂きたい。

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のりたまちび

4.0【”精神疾患者の哀しみを癒し、希望に変える場。それが巴里、セーヌ川に浮かぶ2階建ての木造船アダマン号なのである。不寛容な現代社会の中、この作品には優しさと希望と共存の大切さが描かれているのである。】

2023年7月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

知的

幸せ

■パリの中心地、セーヌ川のきらめく水面に照らされた木造建築の船・アダマン号。
 デイケアセンターであるその船は、精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、音楽や芸術など、創造的な活動を通じて社会と再びつながりを持てるようサポートしている。

◆感想

・今作には多くの精神疾患のある人々が登場する。
 ロックを格好良くギターでつま弾くオジサン。
 絵が巧い少し太ったオバサン。
 18歳で発症し、56歳になるまでその病と闘う何処か陽気なオジサン。
 発症後、息子と離れた事に悔いを残す黒人女性。
 多くの人が、安定剤を呑んでいるようであるが表情は明るい。

・スタッフの方々の彼らに対する接し方が素晴しい。
 1.素直に話を聞く。(傾聴の姿勢)
 2.一人の人間として彼らと接する。(個の尊重)
 3.彼らに話しかける。彼らの気持ちに寄り添いながら。そして否定をしない。(肯定的態度でのコミュニケーション)

■私事で恐縮であるが、20年前、同じ職場の先輩が精神を病んでしまった。仕事の納期が厳しすぎてアウトプットを出せずに、分裂病になってしまったのだ。
 一番若く、人事歴もあった私がその先輩を心療内科に連れて行ったが、医者からは冷たく”精神病院に連れて行ってください。”と言われた。
 そして、私は社用車で遠くの山の中に有る精神病院に先輩を連れて行った。
 医者は軽く先輩の症状を観察し、鉄格子のある小さな部屋に先輩を収容した。
 私は忙しい中、一週間に2度ほど夜中、精神病院に行って先輩の様子を一月間伺った。
 そして、先輩は一カ月後、ご両親に連れられて退社し、故郷に帰った。
 ご両親は私を責める事無く、深々と頭を下げお土産まで渡してくれてタクシーで帰られた。
 私は、申し訳ない気持ちで一杯になってしまい、駅で泣いてしまった事を苦々しい気持ちで思い出す。

・というトラウマがあるため、この映画には救われた。ある病院のデイケアセンターだというアダマン号には病院が患者の様子を見ながら、そこで患者に対して癒しの空間を与えているのだろうな、と思ったのである。
 そこには、精神を患った人を社会から排除する事無く、個を大切にして、患者に共感しながら、人間として扱っている姿が描かれていたからである。

<このドキュメンタリーには、現代社会に蔓延る姿勢とは対極にある、多様性を受け入れる文化が描かれている。
 もしかしたら、撮影中にはイロイロと問題が発生したのかもしれない。
 だが、ニコラ・フィリベール監督はそういう場は映さない。
 今作からは、デイケアセンターのスタッフの人々が患者一人一人の違いを認め、共存することの豊かさが伝わってくるのである。
 不寛容な現代社会の中、この作品には優しさと希望が描かれているのである。
 私は、今作は佳きドキュメンタリー作品であると思います。>

■フライヤーには、審査員長であるクリステン・スチュワートの”本年度のベルリン国際映画祭で金熊賞をこの作品に贈るのは光栄です。”と言うコメントが書いてある。
 クリステン・スチュワートのファンとしては、とても嬉しい一文でありました。

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NOBU