当方、ホラー映画は好きだけど、耐性はあまりなく、なんなら耳を抑えて薄めで見る事もしばし。
ただ今作については、怖さグロさは漫画チック。臓物や生首もコント番組に出て来そうなクオリティ。びっくり箱的な大きな音による驚かせはありつつも、ビクッとなる事で、頭が少しバグり、作品の面白さを倍加させるスパイスとなり丁度良い感じ。
怖いのが苦手な方も(余程苦手でない限り)安心してご覧になれます。多分。
予算もスタッフもすごく少ないのでしょうね。エンドロールがあっという間に終わってびっくり。流れ切るのに1分かかっていない!監督、脚本、主演が同じ方らしいし、カメラスタッフなんて3人しかいなかった。
それなのに、カメラワーク、構図、テンポ、演出は抜群に素晴らしく、特にクライマックスの殺陣の迫力は必見です。
また、ぬいぐるみの表情なき表情が感動的なまでに豊か。ラストのスローモーションシーンは、キャラクターの喜怒哀楽が総て表現されているかのようで、その美し刹那さに思わずため息が漏れてしまいました。
それは『ミーガン』や、日本の川本喜八郎作品のような「まるで本物の人間のようだ」という性質のものではなく、あくまで「ぬいぐるみ」が「ぬいぐるみ」のまま生命を吹き込まれ、「ぬいぐるみ」としての矜持を全うせんと躍動するからこそ。
そう、全ては「大好きなご主人様のために」。
だから、こんなにも愛おしくて、切なくて、心を揺さぶられるのでしょう。
無論テーマ的に万人向けではないかもしれませんが、ぬいぐるみに、そして生命なき物に鼓動を感じた事がある(ホラーが苦手でない)人には、ぜひチャレンジして欲しい作品です。
うまくピースがハマれば、生涯の友達になり得る作品かと思います。
【補足】
犬猫好きな方には嫌悪を覚えるかもしれないシーンがありますので注意。(個人的にはブラックユーモアの範疇でした)