怪物のレビュー・感想・評価
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かいぶつだーれだ。
子が担任から体罰を受けたと学校に乗り込む母親、その担任の先生、そしてその子供の群像劇。
三人の目線から”かいぶつ”とは何なのかを考えさせられる話。
人間味の全くない対応をされて、隠蔽することしか考えていないような学校に憤慨する母親。
新任で右も左も分からず身に覚えのない体罰を言われ、弁明もできないまま暴走する先生。
クラスでイジメがあるけど立場が危うくなるから何も言えず、しかも誰にも言えない秘密を抱える少年。
多様性という言葉が広く聞くようになった最近。
相互理解が大切だ!と頭では分かるけど、映画を見て、三人のような当事者の立場になったら難しいと思う。無自覚の偏見や差別を抜くのは困難。
観てるときに自分自身が”かいぶつ”になっていたくらいだし。
本当のことを互いに言い合い、理解し合えたたら誰も傷つきはしなかった。
でも言えない空気感。言ったら壊れてしまう信頼や世間体。ほんの少しのすれ違い。それが募りに募って、嵐のような”かいぶつ”となって全てを破壊した。
だから最低限できること。
それは相手の話をフラットに聴き、そして自分の先入観に自覚することだと思った。めっちゃ難しいけど。
ゲーテの言葉で「世の中のいざこざの原因となるのは、奸策や悪意よりも、むしろ誤解や怠慢である」がこの映画にぴったり。
物語り過ぎない群像劇の成功作。
今まで斬り込まなかった所へ焦点をあてた作品
トンネルを抜けるとそこは
カンヌ常連となりましたねぇ、是枝監督。坂元裕二さん、受賞おめでとうございます。お二方とも、今後も日本映画界を引っ張っていってくださいませ。
羅生門形式とたくさんの方がレビューで書かれていて、観て納得。人は自分の目で見たこと、他人から聞いたこと、様々な情報から主観を形成する。主観は一度作られると、そうそう変わらない。それをうまく使って、主観と客観のズレを描きながら、物語を進める手法が素晴らしいと思った。作中の人物みんな、傷を抱えていて、悪意があるわけではないのに、物事が悪い方へ転がってしまう。そして、そのしわ寄せは、弱い立場である子どもに向かってしまう。とても悲しいお話だった。
小さな仕込みも散りばめられ、後から考察したり発見したり、複数回の鑑賞でも、見応えを感じられると思う。そして、坂本龍一のピアノが優しく、泣けてしまう。亡くなって3ヶ月になるが、喪失感が増してくる。ファンでもなんでもないのだけれど、やはり同時代を生きる中で、すごい人だったんだろうな。しばらくは、ふと涙が出ることがありそう。
明るい太陽の下で、笑って自由に生きられる、そういう未来が子どもたちに訪れますように。
怪物は誰の中にもいる
今年観た中で1番好き
かなり浅い言葉で言うと何度観ても泣ける。思い出しでも泣ける。
なんてことない場面で涙が出てきてしまう、そんな作品だった。
(音楽室のシーンで毎回泣いてしまう。)
正直是枝監督の作品は「物語が良質なのはわかるが人情味が重い(押し付けがましい)」「退屈」といった感じで苦手な部類だったのだがこれはエンタメとして最後まで先が気になる展開だったし人情味が心地良かった。
その上後から思い返した時にどのキャラクターも良い人に見えたり怖い人に見えたり嫌な人に見えたり、誰でも「怪物」になり得るなと考えることもできた。
伏線も細かく繰り返し見る事で新しい発見がありそういった部分も楽しかった。
ただ普段作品を観ることに慣れていない人、あまり物事を考えないタイプの人からすると「よくわかんない」という感想になるだろうなとも思った。わかりやすい話が好きな人にはオススメしない。
とりあえず個人的にはかなり心に刺さる良い作品に出会えた。あと音楽良すぎる。
真実に辿り着く難しさ
坂元さんというよりも是枝さんの作品だなあという感想を持ちました。是枝さんの映画はいつもすべてを完全には語らない。時にもどかしいくらい。すべてを語らずに鑑賞者の想像に任せている。この映画もラストシーンとかそうだったように思います。私は悲観的に見ましたが、楽観的に見る方も多いでしょう。まるで自分の心のあり様を試されている、心理テストのよう。俳優さんたちは子役も含めてすごく上手いと思いました。
安藤サクラさん演じるお母さんの怒り・苛立ちもよくわかるし、永山瑛太さんの教師の追い詰められ感も秀逸。そして最も理解を必要としていたのは湊君でした。彼についての真実こそがこの物語の核心ですが、親でも教師でも本人ですら正しく理解していくのは難しく、だから皆が表層的事実・現象に振り回される。大人の事なかれ主義・組織防衛論みたいなものが、ますます事態を混沌とさせる。ここらの脚本は、さすが坂元裕二さん。同じ時間軸を3回見せても混乱しない。うまく描いてます。こういうことは色んな局面で起こり得る。真実に辿り着くのは存外難しいものだとあらためて感じさせられました。
★追記--怪物について
この映画に「怪物」はいませんでした。苦悩する人々がいただけ。そこに至る環境があっただけです。いや、あれこそが怪物だという人はいるでしょう。ここらの感じ方も人それぞれ。心の持ちようだと思うのです。心を映す鏡のような映画だったのかもしれません。
近年の邦画で最高傑作かも。
映画好きの評価したいレビューは参考にするべからず
難しい
是枝裕和監督最新作というだけでなく、坂本龍一の遺作としても心して鑑賞したい一作
非常に見応えある作品であることはもちろんですが、まずは触れておきたいのは本作のパンフレットです。やや控えめなサイズながら、内容が非常に充実したパンフレットには、闘病しながら書き綴った坂本龍一の文章(絶筆?)が掲載されており、それだけで手元に置く価値は十二分すぎるほどにある読み物となっています。
流石に坂本龍一本人が本作のために作った劇中曲の全て演奏することは不可能だったようですが、静謐で美しい、しかしどこか不穏なメロディーは、映像の雰囲気と絶妙に絡まって、耳から離れなくなるほど印象的です。
映画本編では、思わず演技であることを忘れるほどに観客の感情を高ぶらせる是枝監督の演出が冴え渡っていて、序盤の小学校における理不尽なやりとりでは、教員たちの丁寧だが非人間的な対応に思わず安藤サクラと同様、つい声が出そうになるほどです。
しかし是枝監督は時系列と視点が変えて、同じ場面の全く異なった側面を見せることで、さきほど観客が心で振り上げた拳の置きどころをなくしてしまいます。このように本作では、観客の単純な予断を許さない登場人物の内面(中村獅童演じる役は除く)を、独特のリズムを伴った映像の積み重ねで表現しています。
なお本作では映像と同じくらい、言葉の使い方も重要な意味を帯びています。多くの台詞は、決して説明的ではないものの、ほんのちょっとした抑揚のつけかたや間合いで、一聴しただけでは取りこぼしてしまうそうな、話し手が込めたほんのりとした悪意を表現してみせます。巧みだけど、良い意味でいやらしさの漂う演出であるとも言えます。
なお作中には、主人公の二人の少年の関係性に関する、ちょっと気になる要素も含まれるんだけど、監督ももちろんその問題は認識していて、そもそもそうした描写を含めることが妥当なのか、適切に演技指導するためには何を配慮すべきなのかについて、専門家を交えて綿密に検討したとのこと。こうした制作における丁寧な問題の洗い出しと対応の積み重ねが、本作を傑作たらしめた、と言えます。
モヤモヤ
この時代、どうすべきか
すごくいい映画。最初の30分と次の30分、その次の30分と最後の30分で感情が全く違う。喜怒哀楽の怒と哀がかなり多めだけど、嫌な気持ちではない。分かっていたはずのことを再認識、というか今生きている人たちが一番大切にしなければいけないことを描いているような気がする。それは自分も常日頃から注意していたことなんだけど、この映画を見て、全くできてないじゃん、自分、まだまだじゃん。という気持ちになった。全体的な感想としてはそんな感じ。
細部について述べるとするなら、本当に秀逸だったのは学校の描き方。自分が小学生だった時ってこんな感じだったよなという気持ちになった。人と違うことでからかわれたりからかったり、大人に対して素直になれなかったり、テレビや大人の影響を多く受けたり、、、そこの描き方が非常に秀逸で、私たち大人は色々気をつけなきゃいけないよね。ただ一つ、気になったことは、かなり学校というものを悪く描いている感じではある。教職を勉強している人間としてはとても気になった。学校に勤める人たちはこんな人たちばかりじゃないということは知っているし、今多くの学校がそうであると信じたい。
最後に、役者さん全員の演技が素晴らしく、特に子役の子達がすごい!将来有望だと思う。故・坂本龍一さんの音楽も素晴らしかった。星5。
怪物だーれだ
公開当初レビュー観て不安だったけど観に行って良かった
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