「AIが子育てする世界はすぐに来る」M3GAN ミーガン SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
AIが子育てする世界はすぐに来る
飛行機の中で鑑賞。ずっと気になってたから観れてよかった。
ミーガンが怖い存在でいながら、どこか憎めないというか、映画鑑賞後も「こんな人形があったらいいのにな」と思ってしまうのは、結局ミーガンはどこまでも子供の味方だからなんじゃないだろうか。終盤は主人公の頭ぶっさそうとしてたけど、あれは映画のストーリーの都合でミーガンを悪者にしなければいけなかったからであって、ほんとのミーガンはあんなことしないと思う。
この映画では、大人は自分の都合で正当化することがあるのに、力関係が決まってるから、子供は納得できなくても「飲む」しかなくて、大人の言うことは全部正しいことになってしまっていて、しかも大人自身も自分は正しい、って思いこんじゃってる、っていう子供視点のいらだちや不満がよく表現されていたと思う。
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追記
あとで、「ミーガン」はスマホの暗喩なんだなー、って気づいた。一見単なる「チャイルド・プレイ」の焼き直しのようだけど、実はすごく現代的な問題を扱った、社会派の映画だったんだ。
最近は子供にスマホを渡して、遊んでてもらう、という親が増えているらしいのだけど、これが主人公の保護者がミーガンの役割と考えていたことと一致する。
分かりやすく言えば、「子育てに割く時間を減らすためのもの」、ということ。それが究極に進化したものは、最終的にはミーガンのように子育て全般をまかせられるくらいの機能になるだろう。今のスマホにはそこまでの機能はないけど、そういう機能があれば利用したいという人は多いだろう。
カウンセラーや保護者の同僚が「こういった子供との関わり方はどうなの?」といろいろ警告していたにも関わらず、「忙しさ」や「子供が苦手なこと」を理由に関係性を改善することができなかった。
でも、AIはどんなによくできていても、一見人間とのコミュニケーションそっくりだとしても、そこに「心」はない。この映画ではその恐ろしさを描きたかったのではないか。
このことに気づいたのは、最近、ChatGPTに音声でやりとりする機能がついたことを知って、その機能の優秀さにびっくりしたから。ほんとうに人間とやりとりしてるような会話で、AIと思えないほどだった。
赤ちゃんや幼児のころから、こういう音声で自然にやりとりできるAIに子守りや教育を受けていたとしたら、どんな人格形成がされるのだろう? いろいろな意味で不完全な親や先生よりもAIに一番の信頼をよせるようになったとしたら? こういう、すぐ目の前にある重要な社会問題が提起されているのではないだろうか?