山女のレビュー・感想・評価
全50件中、41~50件目を表示
冷害、飢餓の惨状が身に染みる痛みを呼び起こす。
科学進歩と民主的政治等が食糧難と貧困を回避してくれたが、
今日では、より多くより深い社会問題を日常に溢れさせている。
少なくとも18世紀の飢餓よりはましになったことに安堵するが、
そしてたら、次は何をしたらいいのか!
山歩きでもして考えます。
原始の森はまだまだ深くて素足素手では歩けない。
白川和子さんの元気な御姿を観れて良かった。
^^
人間の脆さと自然への畏敬の念、
そして現代にも通じる貧困や差別など社会問題を映し出したドラマ。
18世紀後半の東北。
冷害による食糧難に苦しむ村で、凛は人びとから蔑まれながらもたくましく生きていた。
そんな彼女の心の救いは、盗人の女神様が宿ると言われる早池峰山だった。
ある日、村中を揺るがす事件を起こし、村人から責められる父親・伊兵衛をかばう凛は、家を守るため自ら村を去る。
けっして越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越えた凛は、さらに山の奥深くへと進んでいく。
そんな凛の前に現れたのは、人間なのかもわからない不思議な存在だった。
凛役を「樹海村」「ひらいて」の山田杏奈、
村人たちから恐れられる山男役を森山未來、
凛の父親・伊兵衛役を永瀬正敏がそれぞれ演じ、
二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでんらが顔をそろえる。
芸術性9割、娯楽性1割?
『私の人生は、誰にも奪わせない』
とポスターやチラシには書いてあるのですが、そういう映画ではなかったです。少なくとも私には。
夏休みも近いので、レビューをふたパターン用意しました。
【読書感想文的なレビュー】
人権などという概念があるはずもなく、生まれた村以外の社会のことも、教育などもない山に囲まれた小さな世界。
もちろん、そこに住む人間のほとんどは、そこが世界のすべてであり、他と比べて大きいのか小さいのかも分からないし、比較するという発想もない。
生き方において、何かを強いられながら生きるか、生きざるを得ないから自ら生きるか。
その違いしかない。
〝より良く生きるために〟とか〝何をすべきか〟
という命題。現代人にとっては、あらためて突きつけられなくても日頃からある程度、無意識に身についている哲学的な思考だと思います。しかしながら、この映画の世界のように、そんな命題について意識することが無い環境で生まれた人間にとっては、自然環境から受ける影響は、神々からの意思表示の顕現であり、何かに導かれるように降りてきたインスピレーションに従うのは当然のことなのでしょう。
農作業の人手としてもカウントされないほどの飢饉。
だからこその集落からの解放。
天候不順でなく、豊作が続いていたのなら、労働力として否応なく村落に取り込まれていたはずです。
人身御供の儀式か、豊穣への感謝の祭か。
【正直なレビュー】
きっと芸術性の高い作品なのだとは思います。
でも、私には無理でした。
最後まで寝ないで見ることのできた自分を褒めてやりたいです。
つまり、エブエブよりは遥かに楽しめた、ということです。
古来の日本にみる「神」という存在を感じる
サービスデイの土曜日、シネスイッチ銀座で今週公開の本作の客入りはけして多くありませんが、雨の中わざわざこの作品を観にくるのですから、やはり皆さん熱心なのだと思います。そのせいか、上映が終わってもすぐに立ち上がることなく、席で「余韻」を味わってる方が多いように感じました。
主演は22歳の山田杏奈さん。小柄で童顔のためまだまだ制服役を演じててもそれなりに見えなくもないですが、子役時代から役者としてのキャリアが長い彼女には「本作のような作品に挑む姿勢」に強い意気込みを感じるからこそ、逆に「彼女主演なら見逃せない」と思わせてくれます。セリフは全編が舞台である遠野(岩手県)の方言で苦労も多かったでしょうが、静かに燃える感情の表し方は流石のもので、後半は物語の展開も乗じて神々しさすら感じます。
そして、助演の皆さんも素晴らしく、特に今回もでんでんさんと永瀬正敏さんはヤバいですね。この手の作品に現代の価値観を重ねてしまうのはむしろ間違った観方だと思うのですが、それにしてもお二人のやることなすこと、立場こそ対照的なのにどちらにも共通する「人間の弱さ、そして狡さ」が、演じるお二人の「表情そのものに刻み込まれているよう」で説得力しかなく、本作を観た後に(本作の原案である)柳田国男の『遠野物語(未読)』を読めば恐らく、そこかしこにお二人の顔を想像してしまいそうな気がします。
さらに、最早「彼以外考えられない存在感」で、「演技を超えたアクション」なのが森山未來さん。世を捨てた凛(山田杏奈)に生きる意味とそして喜びを感じさせますが、けして「(それを)与えている」という恩着せがましさがなく、代償を求めないところは本当の意味で神のようであり、むしろ、人間が「すがるために作り出した偶像的な神」とは違います。途中、巫女のお婆(白川和子)の「貢物も無いしのう」という言葉の偽物感が対比的でおかしく、最後の展開にそれを嘲笑うようなシーンがそれまでの重たい気持ちに対し少し救われます。観る価値ありました。
早池峰山
18世紀後半とある東北の村。冷害による大飢饉が続く日々。
曾祖父さんの時代に火事を出してしまい、それからずっと犯罪者扱い。田畑も没収。村社会の閉鎖性と身分と差別。人ではない仕事を虐げられる。
娘、凜の心の救いは早池峰山、盗人の女の神様が宿る山を観て思う事だけ。
人らしく生きたい凜は父親の罪と家族を考えて村を去り山に行く。そこには山男が住んでいた。
もしかしたら山男も同じような境遇だったのかも。
凜は村人に捕まり人柱に。村、家族、先々代の罪、大飢饉を救う為。何故若い女性を生け贄に…
日本各地、若しくは世界的にあったとすると胸が締め付けられ苦しい、モヤモヤ感が残る。ああ、気分が悪い。
人柱に火をつけられた時は心から雨が降ってくれと願った。演出では実際に雨が降り、雷が落ち凜は大好きな山へ帰って行く。1人の娘に対する村全体からの圧力と差別は重すぎる。人間らしく生きてと願う。
偶然にも、とある美術館で私達は何者?ボーダレス・ドールズを鑑賞。歴代の人形についての展示会。もっと早くこの不条理に気付き、人形という身代わりという考えがあったならばと心底思った。
世界観と物語がマッチ
遠野物語。 山女のエピソードとの事。日本映画らしくない映像で、どこまでも日本独特の物語のマッチングが思いの外あっていて、良かった。
主演が少し現代っぽさと甘さが強いが、怒涛の追い込まれ演出によってかなりそのイメージが排除されてるのにも好感。そこらのくだらない映画見るなら是非
山田杏奈の新たな表現に驚く、歴史を再構築し力強さを与える
東京国際映画祭、ワールドプレミアにて鑑賞。福永壮志監督と山田杏奈さんが登壇。TV版は未見。近年類を見ない、生命力とメッセージ性を兼ね備えた日本の史実を基にした映画。なかなか凄い。
海外に住んでいたことから日本の文化に興味を持ち、史実を組み立てながら本作を完成させた福永壮志監督のオリジナル作品。東北の冷害2年目から始まり、自然と渇き切った感情を抱く人たちの表情から、厳かで緊張感を抱く。その中で生きる凛が、理不尽から開放されるように山女になったことで、自分らしい呼吸をしていく物語。
偉人を描く作品は多くあっても、名も知られない様な1人の女性を軸に描く作品はなかなか珍しくなった。実際、史実に残っていることもあるとのことで、差別や理不尽、集落による逃れられない連帯感は当時からあったと考えられる。非情と言う前に、致し方ない当時の生活感が充満し、現代と奇妙なリンクすら感じる。その中で「山女」として生きた彼女は、社会的には間違っているかもしれない。しかし、それでも呼吸は確かに強く、1人の人間としての生を宿していくのであった。
そんな山女となる凛を演じたのは、出演作が途切れない山田杏奈さん。強い眼差しで立ち向かい、生き続けていく。その様は圧巻の一言。今までにない程、意欲的で挑戦的な役に彼女の強さと重なっていく。そして、周りで出てくるその他キャストが生み出す個々の信念は、重厚的で作品の幹として力強く伸びていく。変化の少ない作品の中では物凄く重要なことだとつくづく感じる。
社会は自然だ。多くのビルや線路が幹や枝葉の様に生え、軋轢の中で確かなモノを抱いて生きていかなければならない。そんな力強さはこの作品にはある。そんな息苦しさの中、確かな生命力を持って生きる彼女から学ぶことも多いと感じた。公開は来年の予定とのこと。じっくりと大きなスクリーンで、宿る魂を感じてほしい。
積極的に見たい作品ではありません
2022東京国際映画祭
似たような歴史的事実はあったんでしょう、多分。最後だけがファンタジーなのかもしれませんが・・・
暗くてつらくて救いない物語です。質はそれなりなので、そういった物語を嗜好する人にとっては最適な作品かも─
出演者みんな汚れ役みたいなもので、特に脇の憎ったらしさといったら─見事なパフォーマンスでした。
全50件中、41~50件目を表示