「リアルになればなるぼど…というジレンマ。」リトル・マーメイド mamiさんの映画レビュー(感想・評価)
リアルになればなるぼど…というジレンマ。
字幕版で2回鑑賞。歌唱シーンは素晴らしい。岩の上にバッ!と上がる歌い終わりとか鳥肌立ちました。もともと楽曲の良いリトルマーメイドだし、海の生き物の乱舞とかファンタジー的見せ方は大変上手い。「お姫様もの」の中でも海辺の、どこかリゾートのような雰囲気の土地?なのでドレスが薄手のコットンシルクのような艶消しの軽い素材なのもとても可愛らしくておしゃれ。
…なのだが、実写化し、人種などについてもいろいろ考えられ「現代の理想と現実」に則そうと作られた結果、逆にさまざまな矛盾や難点を生み出しているようにも思えた。
まず、アリエルの配役が話題に上りがちだが、それは別に良いと思った。もともと実写にする時点で絵とは違う「絵面」になるのは当たり前だから。それより王子。まるで魅力がない。さしてイケメンでもない。ふたりが運命の恋に落ちるには、お互いにフックがなさすぎる。弱すぎる。犬を助けてた良い男性だから?ぼんやり助けてくれた女性っぽいから?これはアニメのお伽話なら絵の力で押し切れるが、実写となるともっと説得力が要るようになる。
そしてアースラが変身した悪女。めちゃくちゃ可愛く演技もオーバーで魅力的。…え、これだけ?出てきてその夜婚約してこれだけ?このあたりの展開がまた弱すぎ薄すぎ。
アースラの憎しみの根拠、野望、幽閉された理由、これまたすべてがぼんやり薄め。
城下町には黒人も白人もアジア人もいる。どこの国なのか、いくら架空の理想の風景としてもやはり違和感がある。多様性?でもみんな英語を話してる。
スカットルはバンバン魚を食べてるけどフランダーは大丈夫なのか。これから人間界で暮らすアリエルは魚を食べる人間をどう思うか。
7姉妹の人種が皆違うのは、妃もそれぞれの海に7人いるということ?でも殺されたのは共通の母っぽいので、それぞれの海に合った娘を生むことができるということかも?王の後継はどうするのかな?
これらすべて、アニメだと良い意味で誤魔化せてた部分だと思うんだけど、実写になると途端にすごく気になってしまうので、もともと矛盾を孕んだファンタジーというものの実写化はなかなか難しいかもなあと思いました。
むしろ、この作品の「2」が観たい。海と陸、人魚とニンゲンのどんな関係や世界が描かれるのか。とても興味があります。
それでも、娘の結婚を許し、最後に派手な魔法ではなくそっと波を立てて娘のボートを送り出すトリトン王にはグッときて涙が出て、すべて許せる気持ちになりましたね。