「終盤微妙」リトル・マーメイド SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
終盤微妙
正直言えばやや微妙。
面白くないとまでは言わないが、とくに心に残るようなものがない。
アリエルが黒人だからだとかはあまり関係ないと思うけど、全体的に世界観に納得いかない点が多い気もした。
こないだ金ローで美女と野獣の実写やってたけど、やっぱりこの実写は素晴らしいなー、と改めて思った。ストーリーは分かってるのに、感動ポイントがたくさんある。
でも今回のリトル・マーメイドは、あんまりぐっとくるところがないというか…。
配役の多様性(ポリコレ)のために世界観が不自然になってる、ってのはたしかに感じた。
アリエルたち姉妹を7つの海をそれぞれ統括する存在にする、というのは面白い変更だと思った。これなら、7姉妹が多様な人種で構成されていることになんとなく納得する。
でも、人間の世界の多様性はよく分からない。明らかに中世ヨーロッパみたいな世界なのに、人種が多様でいつの時代のどこなのかよく分からない(まあ、これは美女と野獣でもチラっと思ったけど)。
あと、「動物がしゃべって人間と同じ知能をもつ」ことのリアリティをどう処理するか、という問題。アニメだとそんな不自然じゃないけど、実写でそのままだとダメなんじゃないかと思ってたので、どう処理したのか気になっていた。
結果は、まあ、アニメの世界観のまんまだった。つまり、普通に動物がしゃべる世界だった。
海の中の生物がみんなしゃべって、人間と同等の知能がある世界で、なんで犬だけしゃべれないのか、って思ってしまうし、スカットルがオヤツのお魚をパクパク食べながらフランダーと話してるのはギャグ漫画みたいだと思った。
アリエルが人間の世界ではお魚は単なる食糧なのねー、みたいなこと言うシーンがあったけど、人間なみの知能がある存在を食べてるのって怖い世界だ。
アニメのリトルマーメイドって、アリエルと動物たちのかけあいの楽しさが大事な要素なのでそうせざるを得なかったというのも分かるのだけど、例えば、トリトン王の魔法的な力が働いた一部の動物だけそうなってる、みたいにしても良かったのではないか。
人魚のデザインも細かいところだけど気になった。男は上半身人間の裸なのに、なんで女はまるで水着みたいなデザインのウロコをつけてるのか。アニメだと女の人魚は貝みたいなブラつけてなかったっけ?
それでも中盤まではそれなりに面白く見れていたのだけど、クライマックスと終盤は、ちょっと納得いかなかった。アニメの方のストーリー忘れてしまったのだけど、こんな話だったっけ? 魔女が簡単にやられてしまうし、結局どうなったかよく分からないし、トリトン王が復活するくだりもよくわからなくてカタルシスがなかった。
一番「これはちょっと…」と思ったのが、最後、トリトン王を含めたくさんの人魚たちが海岸に集まって人間たちと仲良くするところ。海面に出たトリトン王は海中にいたころのオーラがぜんぜんなくて、普通のおじいちゃんが海から顔出してるようにしか見えない。
アニメのストーリーもそうだったのかも知れないけど、少なくとも実写ではこのシーンはない方が良かったと僕は感じた。
人魚たちは人間にとって神秘的な怖れ(畏れ)の対象のままの方が良かったと思うし、トリトン王は神のような威厳をたたえた存在として描かれた方が良かったと思う。