「生き方が下手なネリーに感情移入しました。」バビロン yoiteさんの映画レビュー(感想・評価)
生き方が下手なネリーに感情移入しました。
<ラ・ラ・ランド>が面白くなかったので、大して期待していなかったが、予想外に大変ドキドキさせられました。ローリング・トウェンティーから世界大恐慌、禁酒法時代に入る前までの古き良き時代を描いた映画。この映画で地に足を着いた生き方をしたのは、ゲスなハリウッドセレブに、たった一度の映画出演で決別したシドニー、くだらないハリウッド人種と思いながら、上手に渡り歩いたアンダーグラウンドの女王フェイ、日の当たらない場所で
ゴキブリのように生き残る、ゴシップ屋のエリノアの3人でした。対照的に映画を愛してやまない大スターのジヤック、貧しかった子供の頃から成功を夢見てのし上がろうとしたネリーとマニーの挫折が痛々しかった。デ-トリッヒをモデルしたと思われる、退廃美が、魅力的ですね。
シドニ-は目の前の大金に躍らされせず、ミュージシャンの道に戻ったのは、本質を見極める能力ある本物でした。フェイはマイノリティーとしての苦しみを越え、欧米で翻訳者としての再チャンスを掴むため、旅立った強く賢く冷静沈着な魅惑的な女性でした。こうして中国系アメリカ人の成功は、人一倍努力して、今があるんてすね。
ジヤックが普段はあんな破壊的な生活をしているのに、映画にたいしての情熱が真面目で凄くて驚きました。いくつもの語学をマスターして、大スタ-になっただけありますね。ト-キ-に夢と期待を抱いていたのに裏切られ、忘れられたスタ-になるよりも、忘れえねスタ-として終幕を迎えたのは、哀しくせつなかったです。
機転と気配りができるマニ-と、場が読めない破滅的でコンプレックスだらけのネリ-は、性格は正反対だが、貧しさから抜け出そうとする気持ちだけが、惹かれていたんですね。ネリ-は、上辺だけ上品ぶったハリウッドセレブリティに、嫌気して本音をぶちまけた、か弱くデリケートな痛々しい女性でした。一方、貧しいながらも良識ある家庭で育ったと思われるマニ-ですが、ネリ-に振り回されなければ、成功してたかもと思いました。しかし、ハリウッドは一寸先は闇の世界なので、平凡だが堅実で良識のある世界に早々に戻って良かったです。
それにしても,あの時代に女性監督がいたのですね。ト-キ-の初頭時代は演技と音楽とセリフが同時撮影で、失敗すれば何度も撮り直しなんて、大変な時代でした。この映画に引き込まれたのは特に、ネリ-の悲痛な叫びを体当たりで演じたマ-ゴットと、ジャックの胸がしめつけられるような、心に突き刺さる、演技描写のブラッドが素晴らしかったからです。
ラストで、夢の世界で生き残るのは壮絶だなと、重々しい気持ちになりました。
時代に流されず、夢を見過ぎず、自分を見失わずに生きようと教訓になった映画でした。