劇場公開日 2023年2月10日

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「ハリウッド版『カメラを止めるな』(打ち上げあり)」バビロン 蛇足軒瞬平太さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ハリウッド版『カメラを止めるな』(打ち上げあり)

2023年2月13日
iPhoneアプリから投稿

現場あるあるの物量、規模はハリウッド版『カメラを止めるな』
(打ち上げがハンパねーー)
とも言えなくもない。

さまざまな作品で描かれてきた、
社会、時代のアップデートの変革期に翻弄される登場人物たち。

サイレントからトーキーへ。

うまく適応していくジャックと、
適応どころか自由過ぎて、
ルールも守れないネリー。

その狭間の主人公マニー。

マニーはチャゼル本人の、
悩みや映画に対するスタンスも、
反映されているのかもしれない。
コンプライアンス等、
現場での周りの理不尽さ、
一歩先のアイデアなんて理解されないのは、
現場あるある。

映画にしたい事、
撮りたい事なんて、
ギャングの城の地下のように、
現代では映画にできない事ばかり。

トランペッターの顔に靴墨を塗る背景(当時は白人が顔に靴墨を塗ってパフォーマンスしていた。それにしてもアフリカ系の人に靴墨塗る!?ありえねー!これもコンプライアンス!って言われたんだろう。チャゼルはこのおかしなシーンをカットしないで、あえて残したのでは?)
象からの、豚への◯◯、
ネリーが発射する大量の吐瀉等、
観客が悲鳴をあげればあげるほど、
汚物から目を背ければ背けるほど、
大量の汚物が腹に溜まったチャゼルはスッキリするのだろう。

そんな言いたい事の数々を、
現場あるある風に数々の作品へのオマージュと共に無いようである物語は進んでいく。

ワンスアポンのハリウッド、
反コンプライアンスへの挑戦はソドム、
グッドモーニングバビロン、
スパイディーの顔の白塗りはベニスに死すか、、、
カメラを止めるな、、
そして・・・。

just singin' singin' in the rain
現実の周囲からの、
汚物の雨霰に降られながら、

時計じかけの、、、
いや、
キューブリックへのオマージュ、
そして、
ザッツ・エンタテインメント、
への、
リスペクトなのかもしれない。

薄い酒池肉林の表面だけはカメラに収めても、
酒の池の底に澱む人間の業や、
肉林の皮膚に蠢く匂いのようなものを、
描けない、
ハーバード出のボンボンが、
社会や時代にそんなに興味もなく、
MCUやDCEUのような凡庸な(ジャック曰く)作品(音楽やリズムでごまかせない、緻密なイメージ、技術が必要)のオファーにも乗れない、PTアンダーソンや、イニャリトゥのようになりたくない現状への嘆き。

それはまるで、
イニャリトゥにとって、
バルドが、
偽りの記録と一握りの真実であるように、

バビロンは、
チャゼルにとって、
偽りの記録と一握りの真実なのかもしれない。

以下鰐足、、、蛇足。

50年後、100年後を意識して、
映画の神様原理主義に走るか、
そこはジャックのようにならないよう、
ブラッド・ピットと、
よく話し合って、
『アリゲーター』とか
撮るのはどうだろう。
大傑作を期待!

アリゲーターなめんなよ。
噛まれるのはもっといや。

冒頭に出てた、
権利処理の関係で一部字幕無し、
というのは珍しい。

おそらく、
singin' in the rain。

作品自体はパブリックドメインなのに、
日本語訳が権利発生するかもしれない、、、
問題。
権利元がMGMのみで、
明らかだと権利処理すれば良い。

一般的に、こういうケースは、
権利元が不明とか、
権利元は明快だがグレーな組織とか、
契約書を交わしてないとか、
手が出せない問題が多い。

今回は、
パブリックドメインで、
作詞家との契約が不明、
作曲家とは問題なし?

やっぱりアリゲーター!

蛇足軒瞬平太