「栄枯盛衰、諸行無常…」バビロン キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
栄枯盛衰、諸行無常…
(途中、若干ネタバレっぽい内容を含みます。)
アバンタイトルで描かれる、100年前のハリウッドにおける映画業界の暴走バブルっぷり、そこで何とかしてチャンスを掴んでやろうと野心を燃やす人々やそのおこぼれにあずかろうという人達を描く乱痴気騒ぎの30分が、とにかく圧巻。まさに「バビロン」。
(この冒頭の下品さは、最近のメディア作品では敬遠されるタイプのものなので、印象は様々になるんだろうな。あと、私が観に行ったスクリーンがたまたまそういう設定なのか、音量レベルが前半は弱く感じたのはすごく残念。できればドルビーの劇場がオススメ。)
しかし、その黄金時代がいつまでも続くことはなく、映画業界に「トーキー」が出現したことによって大きな変換期を迎え、適応できない人々は徐々にその中心にいられなっていく。
一時の栄華を極めた彼らも、結局は「淀みに浮かぶうたかた」。
後半は、虚勢を張りつつも厳しい現実に飲み込まれていくその切ない姿、それでも、それぞれが自分の人生を賭けて過ごした「生き様」であることに違いはない。
私はいち映画ファンとして、彼ら「中の人」達が、楽しみに待っている観客を意識して作品を送り出してくれているのならば、と素直にグッときた。
あのラストを観るとおそらくこの監督も、『トロン』に始まり、『ジュラシック・パーク』『マトリックス』『アバター』に代表されるCG技術の躍進を「トーキー」登場に並ぶ映画業界のエポックメイキングな出来事として捉えているということなのかな。
糞尿やゲロ、セックスや野心や強欲って「下品」の象徴ではありながら、「人間」であってこその特徴であり、すべての人間の一部なのに、それを排除し、ついには人間を使わずに人間を描こうとすることの滑稽さ。
技術革新の向こう側にある皮肉な結末。
映画自体も、当時の狂乱ぶりを重ねているので非常にテンポが速く、3時間以上という上映時間は、それほど気にならない。
まあ、どこでトイレに行ってもそれほど支障ないと思うけどね。
音楽が良いのは相変わらず。
テーマ音楽は前作の『ラ・ラ・ランド』っぽい雰囲気。
個人的には後半の哀愁を含んだ展開はすごく良かった。