「享楽の終わり」バビロン しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
享楽の終わり
TC PREMIUM THEATERで鑑賞(Dolby-ATMOS・字幕)。
冒頭から中盤はまさに享楽の宴。劇伴の強烈なビートが当時の時代の空気感を鮮烈に浮かび上がらせていました。
後は栄枯盛衰の物語。トーキー映画の台頭により、サイレント映画のスターたちは時代遅れの存在になっていき…
マーゴット・ロビーの演技に魅せられました。奔放なセックス・シンボルを体当たりで演じ、その大胆さは後の破局をも連想させ、いざその瞬間の虚しさはなんともやるせない…
トビー・マグワイアも出色。ほんの少しの出番でしたが、これまでのイメージを覆すイカれ具合で、メイクや汚い歯、喋り方に至るまで、徹底された役づくりに舌を巻きました。
ハリウッド・バビロンの栄華と崩壊を叙事詩的に描いた本作の勢いは、3時間と云う長丁場を感じさせない凄まじさ。
トーキーの登場が発端になる展開は「悪魔の手毬唄」を想起させ、時代の変化が齎した悲劇がとにかく切なかったです。
しかし、時代が何度移り変わろうとも、彼らの栄光はしっかりとフィルムに焼きつけられている。その姿は作品の中に永遠に残り続け、観る者の心に夢の火を灯していく。
その中の誰かが新たな時代を担い、映画文化を形づくっているのだと、映画会社の枠を越えた名作のシーンをコラージュして見せることで示しているラストシーンが印象的でした。
こうして歴史がつくられていく…
[余談]
ラストに登場した映画が「雨に唄えば」だったのが面白いなと思いました。同作は未見ですが、確かサイレントからトーキーに移行する時期に、時代の波に乗った俳優の成功を描いたミュージカルのはず。本作とは真逆の視点から同じ時代を活写した映画を印象的に使った趣向に痺れました。
共感しました!ドキュメンタリーみたいに当時を忠実に再現(可能なのか知らないけれど)したら20年代のステレオタイプをなぞるだけの既視感だらけ映画になってしまう。だからこの監督は凄いところを目指したと思います