正欲のレビュー・感想・評価
全280件中、21~40件目を表示
多様性へのアンチテーゼ
生きるために必死だった道のりをあり得ないって、簡単に片付けられた事ありますか?
物語の終盤に、夏月が検事の寺井に言い放ったセリフに、世の中と私に多様性の理解に対して強烈なメッセージを突きつけている。
性的指向、容姿、環境、様々に異なる5人の人生が交差する群像劇で多様性を理解したつもりでいた私の価値観を根底から覆す。
夏生を演じた新垣結衣にとっては従来のパブリックイメージを覆す不器用な人物を演じまさに自身の分岐点になったともいえる作品で、見応えのある瞳の中に宿る孤独感を見事に表現して見せた。
誰からも理解されない現実を抱えながらも、何とか前向きに生きていく。夏月が最後に寺井に言い放つ「普通ですよ」の言葉に、多様性への強烈なアンチテーゼと捉えられる傑作である。
物語が上手くまとめられていて、引き込まれる作品
それでも生きていくのです
世の中は「いわゆる普通の人々」に対して、明日も生きていることを前提に様々な情報や娯楽が提供されている。しかし自分は普通の人とは違うと認識した人々は様々な情報や娯楽を受け入れることはできず、いつも生きづらさを感じ「いわゆる普通の人々」とは距離を置いてしまう。
この映画はそんな彼ら彼女らを心の内から発せれられ様々な言葉を通じ繊細に映像表現をしていきます。
そして、いわゆる普通の人の代表格である稲垣吾郎(多分、一生LGBTすら理解しない)を悪者に仕立てる(妻にも子供にも逃げられる)事で、普通とは何なのかも提起していくのです。
物語中盤に新垣結衣が「大晦日とか正月って、人生の通知表みたいだね」と言うシーンがあるが、大晦日家族で紅白歌合戦を観る事は、もはや普通の幸せではない。と多くの人はわかっています。
LGBTも色んなフェチも、世の中にはあるんだ。とわかってきた人も確実に増えてきています。共感はできないでしょうが、ちゃんと認めてくれる世の中にきっと変わってきます。
なので、安心して生きていってください。
繋がりたいけど繋がれない私達に向けた物語
内容は、主要登場人物の五人が織りなす立場と性癖と人間模様の中で、それぞれの小説をミステリー形式で最後にまとめ上げる作品。
印象的な台詞は『1人でないとええね。』桐生が佐々木に話す言葉。お互いの性癖に辟易している2人が共感覚を大切に思いやる場面が方言もあり温かく印象に残った。
印象的な場面は、主要人物の若さが気になりました。若気の至りとも思える其々のキャラクターの原風景はそれ程ひた隠しにするものでもない様な気持ちになりました。しかし自分もそうですが若い時は視野狭窄になりやすいので仕方ないですが、もっと内省的な心の機微がみたかったです。
印象的な立場は、三幕構成の三段目にいきなり矢部陽平という小学校の先生を持ってきてオチに向かう所です。その間ミスリードのオンパレードで、くどすぎました。子供が好きな先生が、好きな子供と遊ぶのはいつもの事ですが時代が悪かった。現代ぢゃなきゃ大丈夫だったのに世の中の流れに羨むばかりです。
大多数の人が、少数派に分け入る様な構図の物語。普段と逆の見方が出来る作品は面白いと感じますが、少し短絡的な感じが否めず熱い芝居が逆に引いてしまいました。
最後の終わりにも扉に正面に向かう検察官の寺井を映しながら扉が音を立てて閉まる場面は、分かり合えない人間の描写で、視聴者に考える余韻を与えない寂しさが、後味を悪く変えてしまった様に思えてなりません。
かなりガッカリ
枠外の者たち
画一性と千差万別の難しいテーマを扱った作品
観る人全てに問いかけるよう
炙りだされる価値観
嗜好と簡単に言葉で括るには、あまりにも人格が多様であると謳われている時代。
LGBTQのように安易にカテゴライズして理解しようというのが、今の流れなのだろうが
残念ながら他人の嗜好など理解できるはずもない。
いや、正確には認識や理解はできるが、それを受入れたり共感したりすることとはまた別なのだ。
今作ではマイノリティーであることの生きづらさが、非常に薄い氷の上を歩くかのような危うさと共に全編に散りばめられている。
時代はマイノリティーであることを半ば強制的に共有させ、理解できる形で消化しようと促すが、それは果たして誰が得するのだろうか。
本当の意味での理解や「分かる」というところはまだまだ先である。
その上で今、この映画が生まれて広く世に知らしめたことは、本当に意味のあることだと思う。
ただ他人と違う。それがどれだけ深い意味を持つのか。
そこに生きづらさを感じたことのある自分からすると、今作は大きな光に感じ、
安らぎにも似た感覚を覚えた。
いびつな話ではあるが、他人が他人を理解しようなどと考えること自体が、そもそもおこがましいとさえ思うのだが。
それでも尚、殺人犯を含む犯罪者の嗜好や倫理観を共有したいと思うのが、日本人らしい。
この国の裁判では、他国に対して類を見ない「動機」が裁量に関係するのだから。
結果に対して原因を見て、判断をする。そんなことが本当に人間にできると思っているのだから、ちゃんちゃらおかしな話である。
作中の検事が社会性の代表として描かれる中、理解することの難しさはさておき、そこに対する努力や歩み寄りを感じたいと思うのが、人間であり日本人などだろうと改めて感じた。
多様であることと社会的生き物であること
今世の中で多様性がよくうたわれている。
思っちゃいけない感情なんてない。作品の中でそんな言葉があった。一方で、不倫であったり、発言であったり、社会が監視する目は日に日に厳しくなっている気がする。
社会でいきていく中で、他人に迷惑をかけるような行動は規制せざるを得ない。これは人間が、過去の歴史から積み上げてきた経験値だと思う。一方で、社会と個人の間にある法律ではなく、倫理と言うものがあまりにも曖昧で、何がよくて何が悪いのか、これを規定できるものはないんだろう。
そういった難しさを最大限表現できている気がする。
インターネットはそういったマイノリティを繋ぐこともあれば、孤独を感じさせるものにもなったいるのだろう。
新垣結衣、磯村勇斗、稲垣吾郎良かった!
いつも思うが普通ってなんでしょうね
万人に理解されない人たちがいる、もちろん犯罪は許されないが、それ以外その人の嗜好や生活習慣をとやかく言う権利ってないよね…
ってガッキーの虚ろな目を見ながら思った
こんな新垣結衣が見たかった
溌剌として明るいガッキーより、この新垣結衣が好きです
あと、磯村勇斗は上手いですね、そして苛立つ稲垣吾郎も上手かった
邦画も時々見たくなる
“なんであくまで自分は理解する側だと思ってるんだよ”
水に興奮する?
そんなのありえない。
口にしないまでも、いったい何人の人がそう思うんだろう。
映画を観終わった時はクソつまらんと思った。
理解できなかった。
でも、「君たちはどう生きるか」の時と同じで、レビューするのにいろいろ思い返したり調べたりする中で、この映画の深さが少しわかってきた。
たぶん本当の意味で理解はできてないんだろうけど。
ここで、このレビューのタイトルをもう一度見てほしい。
何が“正しい”のか。
何が“普通”なのか。
マイノリティやダイバーシティって言葉だけじゃ片付けられない。
例えば、誰しも他人には言いにくい黒い部分だったり、共感してもらえないかもって胸の奥に閉じ込めてるものがあると思う。
それを誰かに打ち明けるのってめちゃくちゃ勇気がいることだし、決死の思いで打ち明けたのに、「キモっ」「ありえない」って返されたらどう思うだろう。
唯一、マジョリティ側である寺井を演じた稲垣吾郎が良い味出してて、「社会のバグは本当のいるの!悪魔みたいな奴がいるんだよ、これが現実なの!」って叫ぶ姿が悪魔みたいに見えた。
タイトルの「正欲」が、性欲、正しい欲、明日を生きる欲と複数のキーワードにかかってるのもすごい。
本当にいろいろと考えさせられる映画だった。
気持ちいい映画ではないのでご注意を。
最後に心に残るもの
無理やり暗く描かなくても
流水のように…
ヒトを理解すること・・・
ガッキー目当てで見た作品です。
「せいよく」という意味深なタイトルから、あわよくばエッチな場面が見られるかなと・・・
冒頭で自慰と思われるシーンもありましたが、期待したエロではなかったです。ただ、深く考えさせられる作品で、じっくりと魅入っちゃいました。
人それぞれの性癖、或いは個性について問いかけるような内容ですかね。
それぞれ、人によって感じる部分が有るわけで。例えばそれが普通の人と異なる場合は、知られないようにしなければならない。
人には、普通でありたいという強い意思があり、自信を守るために、異となる思想を否定したくなる。否定されないために隠さなければならない。
その隠された想いを共有することができれば、これ程幸せなことはないのかもしれない。
あれ程、可愛いガッキーなのに、最初の頃は華が全く感じられない。むしろブス(こんな言い方は失礼だが、すみません。自分には語彙力がありません)に見える。これが、共有者を得たとたんに輝いて見えるのだから、その演技力なのか、映し方なのかは定かでないが、ホンッと素晴らしい。感動でした。
同じ性癖(個性、趣味)を理解し合える人が身近にいるということは、この上ない幸せなのかもしれない。また、理解できないまでも否定されなければ・・・
家族という血の繋がりの中でも、一人の人として、その部分は尊重していかなければと、深く考えさせられました。
全280件中、21~40件目を表示