「俳優陣は頑張っていたけど。。。」探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
俳優陣は頑張っていたけど。。。
昨年の年明け早々度肝を抜かれた「さがす」の片山慎三監督が共同監督をしていることや、伊藤沙莉の心地良いハスキーボイスを聞きたかったこと、(FBIに宇宙人の探索を依頼されるというトンでもネタではあるものの)題名からは探偵物であるらしいことなどの理由で観に行きました。
映画館はテアトル新宿でしたが、映画が始まると歌舞伎町周辺が舞台となっており、映画館の選択もバッチリ!しかも映画館に行く前にたまたまお参りに立ち寄った花園神社に宇宙人が居たらしいなんて話も出てきた上、なんと劇中テアトル新宿内で撮影されたシーンも登場!!この辺りは結構アゲアゲでした。
俳優陣も、お目当ての伊藤沙莉の全力投球な演技はもちろん、準主役の竹野内豊のとぼけた感じの二枚目ぶりも良かったです。そのほか、北村有起哉、宇野祥平、六平直政、 円井わん、久保史緒里など、脇を固めた俳優陣にも総じていい演技を魅せて貰えました。
しかし。。。
伊藤沙莉演じるマリコは、ゴールデン街の一角にあるカラオケバーの店主を営む傍ら、探偵をしているという設定でした。まあこの設定はいいのですが、彼女の探偵としての才能が理解できるようなエピソードが全く語られることがなかったのは、非常に残念でした。FBIが依頼に来るほどの腕前の探偵という設定なのだから、彼女の探偵としての資質が納得できる話を見せてくれないと、探偵物として成立しないと思うんですよね。
そもそもバーの店主として働く姿は描かれているものの、探偵として働いている時間が非常に短く、北村有起哉扮する常連客から自分の娘を探して欲しいと依頼されたのに対してやったことは、Twitterと思しきSNSに娘の写真をUPして人探しのツイートをしたことくらい。そんなん俺でも出来るやん、とツッコミたくなるレベル。うーん、こんな探偵に依頼するFBI大丈夫か?
また、マリコのバーに集まるのは、それぞれ暗い過去や重たすぎる現実を抱えた人たちばかり。この辺りもそこそこ面白い設定であり、素材として光るものがあると思ったんですが、宇宙人探索という非現実的でSF的な素材と、有機的に融合していたようには思えず、全体として取っ散らかった作品だったと感じられました。
件の娘を探していた常連客が、ラブホテルの一室と思われる場所でヤクザに脅されているシーンでは、いわゆる「大人のおもちゃ」のごっつい奴が動き続けて「さがす」を彷彿とさせる究極のナンセンスなシーンがあったり、男性諸氏ならご存じだろうソフト・オン・デマンドのマジックミラー号が登場したりと、ブラックコメディ的な要素もちりばめられていたのですが、多種多様な素材を最終的にひとつの作品として統合する大黒柱がなかったため、これらのコメディ要素もあまり笑えるものになっていませんでした。
役者陣はそれぞれいい演技を魅せてくれたと思うものの、ストーリーを一貫させる幹の部分がなく、非常に残念な作品となってしまいました。